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三十二話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(後編) ページ33

樋口が混乱していることに気づいたAは、敦とナオミを連れて、路地の奥へと避難した。




『此処までくれば大丈夫かな』




あんな出来事があった後でも、落ち着いているA。


Aはナオミの体をそっと地面に下ろすと、腰まで伸びた自身の黒髪を頭の上の方で結んだ。


一方敦は、不安をぶつけるように、Aに話しかける。




「Aちゃん、谷崎さんは大丈夫なの?マフィア相手に一人なんて…」




敦のその質問に、Aは手を止めることなく返答した。




『あの人一人なら、谷崎くんに任せても大丈夫だよ』

「なんで断言できるの?」


『マフィアっていってもそれぞれ階級があってね、あの人は、遊撃隊の隊長補佐とかその辺だと思うから。その辺の人なら、谷崎くんでも十分なんだよ………っと、できた』




Aがそういうと、敦は最後の呟きに反応するように、Aの手元を見た。


そこにはナオミが寝ており、ナオミの腹部にはリボンで結ばれた一房の髪の毛が置かれていた。

よく見れば、Aの髪の毛が少しだけ短くなっている。




「一体何を?」


『まあ見ててよ、私の異能力、少しだけ見せてあげるから』




Aはそう言うと、ナオミの額に軽く手を当て、小さな声で呟いた。




『異能力【ごん狐】』




すると、その呟きに応えるかのように、ナオミの周りだけがぼんやりと光りを放つ。


それから少しして光が収まると、そこには血が止まり、すやすやと眠っているナオミがいた。




「!傷が…」


『完全に治すのは無理だけど、血を止めて痛みを軽減するくらいならできるの』


「すごい…」




敦はそう言うと、安心したようにため息をついた。



しかし、安心したのも束の間、谷崎達が戦っている方から、ドサッと大きな音が聞こえる。




「!今の音は」


『…敦くん、多分助っ人が来た』

「助っ人って…。!芥川か!」


『うん、多分。もしこの予想があっていたら谷崎くんがヤバい。私たちも行くよ!』




二人は顔を見合わせると、音のした方に向かって走っていった。

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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時

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