二十六話 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス(前編) ページ27
「小僧、お前が行け」
「へッ!?」
突然指名された敦は、驚いたような声を出した。
昨日入社試験を突破したばかりなのだから、当然の反応と言える。
そんな敦に、Aは安心させるように言った。
『大丈夫だよ、敦くん。ただ見張るだけだし。
それに、密輸業者は無法者だけど、大抵は逃げ足が速いだけの無害な連中だからね!』
「その通りだ。初仕事には丁度良い」
「でっ、でも」
二人の話を聞いてもなお、敦は渋った。
その様子を見た国木田が、一方的にナオミに絞められ、もとい抱きしめられている谷崎に視線を移す。
「谷崎、一緒に行ってやれ」
「兄様が行くなら、ナオミも随いて行きますわぁ」
『私も行くよ。社長に敦くんの教育係に任命されたからね』
「助かる」
国木田の言葉にナオミとAが反応し、現場に行くメンバーが決まった。
各々が準備に取り掛かっていく中、敦も緊張でカチコチになりながら、自分の準備をする。
その様子を見ていた国木田が、敦に声を掛けた。
「おい小僧。不運かつ不幸なお前の短い人生に、些かの同情が無いわけでもない。
故に、この街で生き残るコツを一つだけ教えてやる」
そう言った国木田は、ベストの内ポケットから手帳を出し、その中から一枚の写真を取り出す。
それを受け取った敦は、写真を覗き込んだ。
「こいつには遭うな。遭ったら逃げろ」
「この人は________?」
「マフィアだよ」
敦が顔を上げて質問をすると、一緒に覗き込んでいたのか、そこには太宰の顔があった。
敦はそれにギョッとするが、太宰は言葉を続ける。
「尤も、他に呼びようがないからそう呼んでるだけだけどね」
「港を縄張りにする兇悪なポート・マフィアの狗だ。名は芥川。
マフィア自体が黒社会の暗部のような危険な連中だが、その男は探偵社でも手に負えん」
太宰の言葉を引き継ぐ国木田に、敦が疑問をぶつける。
「何故_____危険なのですか?」
『その人が能力者だからだよ』
「Aちゃん……」
敦の質問に対し、にこやかに答えたA。
国木田は写真の男___芥川___を見つめながら、苦い顔で続けた。
「殺戮に特化した頗る残忍な能力で、軍警でも手に負えん。
俺でも______奴と戦うのは御免だ」
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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時