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十八話 或る爆弾 ページ19

「ね、だから爆弾捨てて、一緒に仕事探そう」


「え、いや、ボクは別にそういうのでは」




ついにはパニックで表情筋が死んだ敦が最後に言った言葉に、犯人は最早引いている。

混乱し始めている犯人の様子を見た太宰が、国木田に合図を送った。

国木田はそれを察知して手帳とペンをポケットから取り出す。




「手帳の頁を消費(つか)うから、ムダ撃ちは厭なんだがな.......!

【独歩吟客】」




そう言った国木田は、ガリガリと手帳に何か書き込み、ビリッと頁を破りとった。




「手帳の頁を____鉄線銃(ワイヤーガン)に変える」




その言葉と共に、国木田の持っていた紙が鉄線銃に変わる。


国木田はそれを構えて、犯人の手元、スイッチに向けて撃った。

見事にスイッチに命中し、犯人の手からスイッチが離れる。


犯人が焦っている内に国木田が犯人の顎を蹴り、犯人を確保した。




「一丁あがり〜」




太宰とAは確保と同時に、植え込みをヒョイと超えて出てくる。


敦は一瞬とはいえ、初めて立ち会った未経験の出来事に体力を消耗したらしい。

へなへなと座り込んだ。




「(はあ、良かった.....)」




太宰が敦に向かってガッツポーズをしてみせると、敦はそれに答えるようにふらっと片手を上げる。



これで終わりのように思われた。




「ぶッ!!」




しかし敦の背後に、突如出てきた手によって敦が押され、転んだ拍子に床に落ちていたスイッチを押してしまった。


ピッと音がして、スイッチが入る。




「(ピ?)...........あ」


『「「あ」」』




爆弾に、残り五秒の掲示がでた。


それに気づいた周りの人達も、声を揃える。

敦は絶叫した。




「あああああああああッ??
爆弾!爆弾!あと五秒!?」




焦った敦が後ろを振り返るが、太宰たちは爆弾から少し離れたところにいる。




「(爆発!?部屋がふ、吹き飛ぶっ!?
爆風を抑え.............何か爆弾に被せないとっ!)」




敦はバッと爆弾の方を振り向く。

敦の異変に気づいた太宰とAは、敦の行動に目を見開き、声を上げた。




『なっ』




敦は爆弾に直接覆いかぶさっていたのだ。

敦自身、無意識に出た行動だった。


爆弾はあと二秒を刻んでいる。




「(あれ?.........僕、何やってんだ?)」


「莫迦!」




太宰が珍しく焦った声で叫ぶ。



______あと一秒。






______ゼロ。



爆弾から発されるピッという音に、敦は覚悟を決めた。

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作者名:ark | 作成日時:2021年1月4日 18時

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