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行きつけのバーにネズを呼び出す。
普通に誘うと100パー来ないので、今夜はオレさまが奢ると好条件を提示した。
これで大体釣れる。
正直なところ、話を聞いてもらいたいだけだからネズじゃなくてもオーケー。
ダンデはダメだ。
話を真剣に聞いてはくれるが、深く聞いて欲しくないところに限ってそれってどう意味だ？とか平気で言うからな。
おかげでお酒が不味くなるし、酔いも覚める。
「またあの症状ですか？懲りないですね」
「またとか言うなよ。オレさまにとっては深刻な問題なんだぜ？」
「とか言ってこの間週刊誌にすっぱ抜かれてませんでした？」
「あれはウソ！一途に定評があるキバナさまが恋人なんて作るわけがないだろ！」
「一途なヤツは自分の口から言わねぇーですよ」
片思いを拗らせて今日で10年。
どーせ忘れるだろうと思ってた頃が懐かしい。
忘れようとすればするほど、忘れられなくなるというループに見事にハマってしまった。
恋人ができる機会なんて腐るほどあったのに、全部曖昧な関係で終わった。
「未練がましいにも程があるだろぉ……」
「そんなに魅力的な女性なんですか」
「そりゃもちろん！」
「じゃあとっくに誰かのものになってたりして」
「……あ」
ありえなく無い話だぞ……。
オレさまより年上なわけだから、け、結婚とか全然ある……！
「もし相手が結婚していたら、諦めがつくんじゃないですか。過去の因縁からおさらばです」
ネズがまさか人妻を寝取ったりしないでしょう、とヘラヘラ笑いながら言う。
常識人であるオレさまは絶対そんな真似をするわけがないが、ただ一つだけ……。
「すきっていっておけばよかったなぁ」
「ティーンですかおまえは」
ネズがマスターに度数の高いお酒を頼んだところでいつも話は佳境に入っていく。
はずだった。
「こんばんは！キバナくんにネズくん！」
「へ、カブさん？どうしてここに……」
「ここのお酒は美味しいからね。彼女にオススメしたくて」
"彼女"と呼ばれた人がカブさんの隣に立つのと同時に酔いが見せた幻覚に酷く驚いた。
はは……、アルコールの力ってすごいな……。
「Aくん、彼らはぼくと同じジムリーダーだよ」
「は……」
微笑む彼女から目が離せないでいた。
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
