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《キバナくんは貴方のことが好きだと思う》
日記に書かれたその一文に思わずため息が出た。
そんなこと遠の昔に知っていたよ。
……今もだとは思わなかったけど。
膝の上で寝るパモの頭をそっと撫でる。
『可哀想な人』
ベラがキバナくんとの仲を取り持とうとしているのは、毎日書かれる日記からおおよそ想像ができた。
本来なら感謝すべきことだが、私は酷く後悔していた。
日記にその旨を書き込もうとすると、右側から大きな影が覆いかぶさった。
「夜更かししてるとお化けに連れていかれるぞ〜」
私は突然声をかけられたことに驚いて、勢いよく日記を閉じてしまった。
なんてタイミングの悪い…。
不思議そうな顔つきで私と日記を交互に見る。
「マメだな」
『…………』
あまりの事態に声がすっかり出なくなっていた。
なにか反応を示さないといけないと思考した末に、にこりと笑って見せることにした。
これ以上何もう言うな、という意味を込めて。
このまま離れてくれたら万々歳だ。
すると、キバナくんは何を思ったのか、私にピットリとくっついてきた。
体温が直に伝わる。
「Aさ、ダンデとバトルする約束をしたんだってな」
『そうみたい』
「ホントだったのかよ！ダンデが自慢げに言うから気になってさ。なあ、オレさまも……」
私はキバナくんの唇に人差し指を当てて、微笑んでみせた。
『そのうち相手してあげる』
「お、おう……」
月明かりでもはっきりとわかる表情。
ああ、本当に君は私のことが好きなんだな。
いや、正確に言うと私ではないが。
そう思うと、キバナくんが不憫でしかなかった。
『早く寝なよ』
「Aが寝たら寝るよ」
子守唄でも歌ってやろうか？と冗談交じりに聞いてくる。
必要ないよ、とポツリと呟く。
パもを包み込むように縮こまっていると、隣からゴソゴソと何かを漁る音が聞こえた。
目をやるとワイン一本とグラス二個持ってにこにこしている。
「オレさまと悪いことしない？」
寝つきが悪いならお酒に頼るのもアリじゃない？
『一杯だけ』
だって、ワインに罪は無いからね。
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
