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「この前全額払ったの根に持ってるからな！」
『だって久しぶりに楽しいって思えたもの。お金なんてそのお礼に使った道具でしかないよ』
にこ、と笑ってみせると腑に落ちない表情でキバナくんはAらしいけど、と呟く。
「そういえばライブが始まる前、何か言いかけてなかったか？」
『……あ、えっと』
「無理に言わなくていいぜ」
キバナくんは私よりずっとずっと前を歩いているのに、どうして歩幅を合わせて私の隣を歩くのだろう。
どうして私なんかを気にかけてくれるのだろう。
『どうして……』
「？」
どうして昔から私が一人になりたいときにキバナくんは現れるのだろう。
『長くなるけど、いいかな』
「……！ああ！！」
キバナくん嬉しそう。
リラックスした状態で話したいという個人の要望により、ナックルジムのトレーナーによって応接間に通された。
応接間に置かれているアンティークなソファで緊張しながら待っていると、キバナくんは紅茶やスコーンを持ってきて机に並べた。
『いい匂い』
「だろ？Aが昔から紅茶が好きなことだけは知ってたから、紅茶の淹れ方勉強したんだぜ」
『うん、美味しい。キバナくんは将来いい旦那さんになりそうね』
「よく言われる〜」
世の中の人もそう思ってるんだ。
スコーンを手に取り、一口食べる。
「だからオレさま結構自信あったのに、ちっとも靡かねぇの」
『……苦労してるのね』
「そうなんだよ。ま、オレさまはその状況を楽しんではいるけどな！Aならどうやって好きな人を落とす？」
『相談相手間違えてるよ』
「オレさまAの意見が聞きたいな〜」
誰かに恋をした経験が無いから、キバナくんにとってためになることは言えないけど…。
『一緒にいる時間を増やす……とか？』
「相手といる時間を増やせば、それだけ意識される時間が増えるからな」
『キバナくんはその靡かない人にどんなアピールをしてたの？』
「そうだな、例えばキャンプに誘ったり、オレさまが作ったご飯を一緒に食べたり、あとボディタッチもしたな……まあ、Aと同じだな」
それ普段と変わらないと思う……けど。
「なあ、ホントに気づかねぇの？」
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
