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『あー…』
恐ろしいことに先日の配信で私が映っていたり、喋り声が聞こえたところを切り抜かれてＳＮＳで拡散されていた。
確認してみたがしっかりは映っていないものの、知り合いが見れば分かってしまいそうではあった。
ネットって怖い。
外に出ることに億劫になっていた私にきっかけを与えてくれた人がいた。
『ライブチケット？』
「そうそう！ネズのライブ行ったことないだろ？」
『確かにないけど……。もらっちゃっていいの？』
「ネズもAが来てくれたら嬉しいと思うぜ？よし、決まりだな！オレさまが迎えに行くから絶対に家から出るなよ！」
『うん、待ってる』
このフレーズ何回言われたことか。
今回はちゃんと大人しく待っておこう。
当日。
スケッチブックを持って、スパイクタウンにあるライブハウスに寄り道せず向かった。
関係者席に通され、特典のラバーバンドをわたされる。
『観客のフェイスペイント……。あれがファンの鑑っていうのかな』
「まあ一発でネズのファンってのは分かるよな」
『みんないい顔してるね』
私も応援してくれる人達のこと、ちゃんと考えないと。
でも、しがない画家が何をできるというのだろう。
「悩みごとか？」
『まあ、そんなところ。キバナくんは私のことよく見てるね。お父さんでも気づかなかったのに』
「Aは顔にはでないけど、仕草にでるよな。ほら、今やってる」
視線を下に移すと右手で左手首を結構強く掴んでいた。
跡ができるくらいに。
「あんまり溜め込むなよ。オレさまとか同性ならソニアさんに相談しろよ？」
『…………あのね、』
大音量のベースが主役の登場を知らせる。
キバナくんの優しさに思わず隠しごとがこぼれてしまうところだった。
言わなくてよかった……よね？
話してしまったら、きっと後悔する。
しかし、長く頭に占拠していた思考はネズさんによってあっさり消えていった。
「お、ネズの激レアファンサだ！オレさまたちもファンサしようぜ！」
『ど、どうするの？』
「ウィンクだ！」
『こう？』
「はは！！かわいい〜」
「「そこイチャつくんじゃねー！！！」」
違うよネズさん！
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
