隠し事の多い君に贈る愛の言葉 (ページ32)

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「キバナさんが来る前、何か言いかけてなかった？」

『覚えてたんだ』

「もっちろん！で、なになに！」

キバナくんの話の後にする内容じゃない気がするけど、今更嫌だなんて言えそうもないな。

『最近実家からお見合いの写真が届くんだーって言いたかっただけだよ』

よくある話だとは思うけど、と付け足す。

「「ないないないない！！！」」

『そうなの？』

「まさか本当に結婚する気じゃないよね！？」

『世間体にもいつかはしないと。一年後にお見合い相手を精算しに行くからもしかしたら……』

母親が口を出してくるだけで、お父さんはいい意味で無関心。

今年、いや今月だけでもホウエンの実家から写真は五冊届いた。

「Aは結婚願望あるの？」

『これと言ってないけど、時期が来たらするつもり』

「どんな人とだ？」

『私に興味無い人がいいなあ』

「仮面夫婦ってこと！？」

『一つの場所に留まっていられないの。そもそもこういう人は独り身の方が割にあってると思う』

ソニアちゃんとキバナくんが頭を抱えて、机に突っ伏してしまった。

仲良しさんだ。

「例えば！Aが会ってきた中でこの人いいなって思った人はいるか？」

「それ私も知りたい！」

一番無難な答えってなんだろう。

二人が納得するような人ってどんな人？

『ダイゴくん……かな』

「だ、ダイゴくんって？」

『調べたら出てくると思うよ。ホウエン地方のチャンピオン、ツワブキダイゴ』

ガラルからホウエンに引っ越してからはことあるごとに二人一緒にいた。

それもホウエン地方にある避難場所が彼しかいなかったからでもあるけど。

『そんなにびっくりすること？結婚したいとか思ってるわけじゃなくて、一緒にいると気が楽なの。ソニアちゃんだってキバナくんだってそうだよ』

いっそみんな私と家族になっちゃう？と冗談めかして言う。

「この人たらし！私が外で稼いでくるから！」

「好きなものたらふく食わせてやるよ！」

『冗談だよね……？』

気づいたら星が瞬く時間になっていた。

家まで送ってくと譲らないキバナくんと夜道を歩く。

『優しいねキバナくんは』

「Aだけだぜ」

……また言ってる。