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『どうして私なの？』
「Aじゃないと意味がないの！！」
押し付けられた穴を開けるための道具を耳たぶにあてがって数十分、なかなか決断できずにいた。
『病院の方がいいと思う。キバナちゃんに何かあったら嫌だよ』
「いいから！！」
たまに無茶を言われることがあるけど、今回は特に躊躇った。
生憎人の体に針を刺せるほどの度胸は持ち合わせてなかった。
キバナくんだから尚更だった。
『……やるよ？』
「うん」
何度も印をつけた場所を確認して、思いっきり針を押し込む。
ん、と声を漏らして、眉間に皺を寄せるキバナくんを抱き寄せた。
痛かったんだ。
大丈夫かな。
ゆっくり離れて顔を見てみると、嬉しそうに目を細めて穴が空いた耳たぶを触っていた。
あれ、意外と大丈夫なのかな。
そのおかげで二個目はすんなりと開けることができた。
「ぎゅーしないの」
『……する』
どうしてキバナくんが急にピアスを開けたいって言い出したのか未だに分からない。
若気の至りだろうか。
『それで、どうして私だったの』
「……………話したら絶対引くから無理。オレさまAに嫌われたくないし」
そんなこと言われたらますます気になる。
ガブリアスとポケじゃらしで遊ぶキバナくんの隣に座り、顔をじっと見つめる。
『教えて欲しいな』
「なあお前のパートナー狡いと思わないか！？」
キバナくんの必死の訴えにガブリアスは呆れた顔をして、自らボールのボタンを押して中に帰っていった。
あんなにもボールに戻ろうとしなかったガブリアスをたった一言で、しかも自主的に戻らせるなんて……。
『単なる興味だから。気にしないで』
帰るために立ち上がると、同時にキバナくんも立ち上がった。
『今日はありがとう』
「おー」
素っ気ない返事をしたものの、私を駅までちゃんと連れていってくれた。
帰りの電車の中でキバナくんがどうして私にピアスの穴を開けさせたのかを考えた。
……分からない。
熟考していると一ついいアイディアを思いついた。
私もキバナくんに開けてもらおう。
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
