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結局放っておけなくて、自分の腕にAをもたれかけさせる。
「ヘイロトム、Aの寝顔撮って」
「嫌ロト。盗撮なんてしたくないロ〜」
「そこをなんとか！」
「こんなことでAに嫌われたくないロト！！」
ロトムのヤツいつの間にAと仲良くなったんだ！？
ジャケットのポケットに入り、狸寝入りをするスマホロトムへの訴えも虚しく、A寝顔は目に焼きつけるしかなくなってしまった。
「Aとは随分と仲がいいみたいだな」
演奏を終えたおとう……フジさんは固い表情で目の前に立っていた。
悪いことはしていないはずなのに、全身から汗が吹き出るような焦りを感じる。
「……距離が近すぎやしないか」
今の若い子はそういうものなのか、と独り言なのか話しかけられているのか分からない発言がさらに頭を混乱させる。
とにかく圧がすごすぎて、フジさんの顔が見れねぇ……！
そりゃ大事な娘だもんな。
どんな人とつるんでるかぐらい把握しておきたいよな。
でこの身なりだったら尚更警戒するよな！
……謝っておこう。
「キバナくんはAのことが好きなのか？」
「………え？」
冗談でないことは、すぐに分かった。
「はい、好きです」
その時初めてフジさんの顔を見たが、笑い方がAそっくりだった。
「そろそろ私は帰りたいと思っているのだが、どうも最近腰が痛くてな」
そこで一つキバナくんに頼みたいことがある、と腰を軽くさすりながら言った。
「Aをタクシーまで運んでくれないか」
「……！もちろんです！！」
Aを横抱きして、裏口に止まっていたタクシーに乗せる。
人目は可能な限り避けてきたが、見た人は驚いた顔でスマホのカメラを構えていた。
のに……！！
翌日。
「なんでネットニュースになってないんだよ！」
「キバナさまどうかしましたか？」
「いや、なんでもない…」
炎上覚悟だったのに一つも話題に上がらないなんて、一体何が起こってるんだ！？
あわよくば外堀でも埋めてやろうと思ってたのに！
「そういえば昨日大丈夫でしたか？」
リョウタは思い出したように口を開く。
「幽霊が出たとか聞きましたけど」
……は？
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
