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ガラル地方の土を踏むのは何年ぶりだろうか。
リュックと画材の入ったバックを持って、空飛ぶタクシーが常駐する所までとろとろ歩く。
寝起きの目にお天道様が染みる。
10時間ほど座りっぱなしだったため、歩き方がなんだかおぼつかない。
今日はもう寝るだけにしよう。
明日のことは明日考えればいい。
タクシーに乗り込むと、続けてお父さんも小柄なキャリーケースを持って隣に座った。
「街に着くまで寝てていいぞ」
『機内で充分寝たから大丈夫』
空港から新居のあるハロンタウンまでの間、観光客と勘違いした運転手は一つひとつ丁寧にガラルの良さを教えてくれた。
スタジアムが見える度にジムリーダーの豆知識をこれでもかと披露する。
そっか、みんな努力が実ったんだ。
自身のことではないが、嬉しくなって思わず口元が緩ました。
「元気にやってるみたいだな」
『そうみたいだね』
こんなにも穏やかな気持ちになったのは久しぶりだ。
眼下に広がるワイルドエリアの夕焼けを刺戟剤にガラルで最初の絵を描き上げる。
色鉛筆なんてほとんど使わないけど、全体的に温かみのあって、これはこれでいいかも。
「これ、お客さんが描いたのか！？すごいなぁ……！」
アーマーガアから降りてきた運転手さんが感嘆の声を上げる。
私が描いた絵で喜んでくれる人がいるなら、その人が持っていた方が余程価値がある。
万年筆でベラのサインを右下に書き込む。
『長距離の運転、ありがとうございました。よろしければ、お受け取りください』
「いいのかい？ありがとう、お嬢さん！」
今度から空飛ぶタクシーを利用する時はこの人にお願いしよう。
手を振って運転手さんと別れると、先に行ったはずのお父さんが待っていてくれた。
『どうしたの』
「いや、何でもない」
なるほど、心配になっちゃったんだ。
もう子供じゃないんだから道に迷うわけが無いというのに。
『私、お父さんとこっちに来て良かった』
旅をしながら絵を描くのもいいけど、ガラルで2人のんびり過ごすのも悪くないかも。
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
