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『いただきます』
お皿に小ぶりに盛られたカレーをスプーンで一口すくって、口に運ぶ。
『……おいしい』
「だろ！いや〜、料理頑張ってきた甲斐があったな！」
そういえば料理男子が増えてるってネットニュースに載ってたっけ。
すごいなあ、キバナくんは。
私なんて旅に出てから一回も自炊したことない。
面倒でしなかったわけではなく、できなかったのだ。
人には向き不向きがあるということで目を背けてきたけど……、ちょっと頑張ってみようかな。
『キバナくんは料理のコツってあったりするの？』
「強いて言うなら、愛情とか……？」
『愛情……。込めたら私の作るご飯も少しは美味しくなるかな』
「なる！絶対なる！オレさまAが作った料理食べてみたい！」
目をきらきらさせて言うので、あんまり期待しないで欲しいな、と保険をかけておく。
キバナくんが片付けをしている間、澄んだ空一面に煌めく砂金の星をぼーっと眺める。
今日はちょうど新月で見える星も多い。
『素敵な夜だね。再会にはいい日でしょう？』
『赤いカーネーションは気に入った？店員さんに聞いた花言葉がピッタリだと思って買ってみたの』
『今でも貴方が生きているような気がしてならないの』
『会いたいなあ』
温かいココアを持ったキバナくんが隣に腰かけて、顔を覗き込んできた。
「誰かと話してた？」
『独り言だよ』
「ふーん……」
じわじわとココアが冷えた身体を温めていく。
ふと視線を感じて顔を上げてみると、ビー玉のような透き通った青色の目が私を見下ろしていた。
何か言いたげな表情をしている気がする。
「その……」
きゅっと結ばれた唇やしきりに動く喉仏から緊張が見て取れる。
彼の口から発せられる言葉を聞きたくないと思っている私がいた。
「月が綺麗ですね」
『……え』
彼はわざわざホウエン地方の言葉でそう言った。
どういう意味なの？
誰の入れ知恵？
何を思ってそんなこと……。
ああ、もう！
キバナくんのせいで思考がぐちゃぐちゃだ。
『星の方が綺麗ですよ』
これが私の出した最もベストな答えだ。
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
