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ナックルシティを出て、近くの木陰でしゃがんで息を整える。
幸い人はおらず、誰かに話を聞かれる心配はしなくてもよさそうだ。
顔をほんの少し上げてみるとバチりと目が合ってしまい、特に疚しいことはないが目を逸らしてしまった。
キバナくんが大声で呼び止めたりなんてしなければ、こんなことにはならなかったのに。
ふぅ、と息を吐くと彼も屈み、同じ目線になった。
「バーではテンパってあまり話せなかったけど……、久しぶりだな！また会えて嬉しいぜ、A！」
にこーっと屈託のない笑顔でそう言うものだから、内心酷く驚いてしまった。
好きなポケモンを聞くだなんて、初対面の人ぐらいだと思っていた。
女の子を手のひらで転がしてそうな見た目になったけど、性格は変わらずいいこちゃんなのかな。
『私もだよ』
気持ちを落ち着かせるためにサーナイトを撫でていると、キバナくんの目がキラキラと輝き出した。
「そのサーナイトってもしかして……」
『キバナくんと初めて捕まえたラルトスだよ。よく絵描きに付き合ってもらってるの』
「何それめちゃめちゃ嬉しい……。それにしてもよく育てられてるな。バトルに出したりするのか？」
『そうだね、みんなの気分がいい時にキバナくんと1戦交えてみたいな』
「もちろんだ！」
バトル自体はホウエン地方にいた頃、ダイゴくんの相手をしていたからきっと退屈にはさせない。
彼も私を楽しませてくれるに違いない。
「ふりゃ！」
『久しぶりね、フライゴン。元気そうでなにより』
手を取り、キスを落とすと嬉しそうに羽をバタバタとさせた。
それに対し、キバナくんが頭を抱えて何故フライゴンにキスをしたのかを聞いてきた。
『ホウエン地方には無い文化だけど、手の甲にキスすることはこっちでは挨拶だと聞いたからやったの。間違ってた？』
「いや、間違いではないけど……」
やけに歯切れの悪いキバナくん。
……あ、そういえば。
徐にキバナくんの骨ばった手を親指で撫で、同じように口付けをした。
おかしいな、挨拶をしただけなのに耳が真っ赤か。
「Aはこれ誰にでもやってたりする？」
『そんなことないよ。キバナくんが初めて』
「こういうのは男がやるもんだからな」
そう言うと慣れた手つきで挨拶を返してくれた。
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作者名：くるとん | 作成日時：2023年2月24日 20時
