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『こんばんは、オニオンくん』
「こ、こんばんは」
こんな夜中の墓場にいる子供がオニオンくんでよかった。
……見る限り1人ではなさそうだし。
「こんな時間にお墓参りですか…?」
『そうよ。私この時間帯にしか起きられなくって』
「ぼ、ぼくも朝は弱いです」
出会った当初は部屋の隅にいて接する機会が全くと言ってなかったが、この感じからするとあと一週間ぐらいで打ち解けられそうだな。
私は持っていたガーベラの花束をゆっくり置き、両手を合わせる。
隣にいたアーマーガアもくわえていたガーベラをぽとりと花束にかぶせるように置いた。
貴方が見ていないうちに随分と大きくなったでしょう?
十年間も合わせてあげられなくてごめんなさい。
彼には一方的ではあるがいっぱい伝えたいことがあったから、長いこととその場にいた。
「あ、あの…」
『ん?』
「"ありがとう"って言って、ます」
私はその意味を何度も咀嚼して嚥下した。
そんなこと言われるためにココガラを引き取ったわけじゃなかったのに。
『そっかぁ…。教えてくれてありがとう、オニオンくん』
「い、いえそんな感謝されるようなことは」
かなり謙虚な子なのね。
優しく頭を撫でると、仮面越しでもわかりやすいくらいに嬉しそうな素振りを見せてくれた。
『また明日、オニオンくんとゲンガーたち』
「……!はい…また明日」
Aがこんなにも喋れるようになっただなんて、日記を読み返していて涙が出るほど嬉しかった。
「何か距離おかしくね?」
『おかしい?』
「い、いえ……普通かと」
スマホに映し出されたゴーストポケモンを見るために近くに座っているだけなんだけどなあ。
「すごい…!みんな活き活きしてる」
『何度か連れていかれそうになったけど、みんないい子だったよ。迷子になった時も助けてくれた』
「ゴーストの気持ちが分かります。Aさんがいい人だから、仲間にしたかったんだと…」
確かにAは底なしの優しさを持ってる。
体の傷がその証拠だ。
「オレさまもう知らない!!」
ダッと控え室を出ていくキバナくん。
子供みたいってオニオンくんがぼそりと呟いた。
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作者名:くるとん | 作成日時:2023年7月13日 15時