【あんスタ】 Uninhibited Life 【男主】 (ページ2)

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「～♪」

部屋中の愛しき植物たちに水をあげ終えた僕は、一階に降り、庭に出た。
バジル、タイムといったハーブからミニトマト、ナスなど。
ここには数十種類の植物たちが育っている。

「今日も元気そうだね。自分のペースで、ゆっくり育っていいからね」

適切な水の量だけを与える。
そして、雑草のチェックをし、一息。

「よし、完了～♪」

初春、はじまりの季節。
この時期は種まきに忙しい。
五年以上も続けていることなので、既に慣れてしまったが。

僕の趣味は、家庭菜園。
高校に入ってからは園芸部でさらに多くの植物を育てている。
今まで何種類の植物を育てただろう。

僕はじょうろを片づけ、手を洗い、庭を後にする。
鼻歌を歌いながらエプロンを手に取り、キッチンへ。

時刻は五時を少し過ぎたところ。
まだ外は薄暗いが、僕の脳みそは十分に働いている。

冷蔵庫から朝食を作るための食材を取り出す。
今日はサンドイッチにしよう＿＿＿＿もちろん、自家製の野菜たちで。

*

「ごちそうさまでした。いつもありがとうね、A」

母さんが微笑む。
僕は「うん」とだけ返し、お皿を片づける。

父は仕事で今日もいない。
年に十回会えるかどうかの生活も、もう慣れた。
現在、僕は母と二人暮らしのようなものだ。

母は朝が苦手だ。
なのでとても早く起きることができる僕が、毎朝朝食を作っている。
今日の起床時刻は＿＿＿＿四時前だったか。

「じゃあ母さん、僕そろそろ行くね」

「いってらっしゃい。気をつけてね？」

「うん」

僕は支度を全て終え、家を出る。
六時前後、まだ空気はひんやりしてる。
はぁ、と息を吐き、鞄を持ち直した。

*

「おはようございます。学生証はお持ちでしょうか？」

内ポケットから学生証を出し、受け付け係に見せる。
この学園は変わっている。
いちいち学生証を見せないと、校舎に入れないのだ。

「＿＿＿＿はい、結構です」

僕はふ、と息を吐き、足早に立ち去る。
三年間行ってきたことだが、どうもあの時間は嫌いだ。

私立夢ノ咲学院、アイドル科。
僕はそこに通っている。

普通科と合わせると中々の規模の学園だが、アイドル科は人数が少ない。
それもそうだ、何せそれなりの審査があるのだから。

教室には行かず、園芸部が使っている畑に直行する。
設置されている椅子に鞄と上着を置き、園芸用品を準備し、作業を開始する。

空は薄く水色を描き始めた。
その下で僕は一人、鼻歌を歌いながら水を撒く。