アドラブル・バランス 7【K.N】 (ページ3)

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会社を出て歩く事、数分。
もっちー君が足を止めたのは、会社のちょうど裏側にあるご飯屋さん。
外に出されている看板には白いマーカーで「テレビでも紹介されました！」と書いてあって、そのお店の有名レベルが窺える。

「有名なお店がこんなに近くにあったなんて知らなかった...」
「本当？ここすごい美味しいから、俺よく来るんだけど...この店で良い？」
「勿論！初見だし気になるから！」

そんな会話をしながらお店に入ってみると、お昼時って事もあってなかなかの混み具合。
「どうする...？」ってもっちー君とアイコンタクトをしていると、ちょうど数人のお客さんがお店から出て行き、店員さんが私たちの前に来て

「二名様でよろしいでしょうか？」

なんて言ってくれたから、私ともっちー君は思わず顔を見合わせて子どものように笑って

「はい！」

と二人同時に答えた。

・

「ご注文がお決まりになられましたら、店員をお呼びください」

そう言って、店員さんは自分の持ち場へと帰っていった。

「あのタイミングで席が空いたのは凄かったね？」
「だね。俺待つの嫌いだし、危うく店変えるとこだったからびっくりしたよ」

窓際のテーブルに座ってそんな会話をする。
でも本当にタイミングが良すぎた事には驚いた。

「どうする？Aちゃん、何頼む？」
「どうしよう...色々あって困っちゃうなぁ...」

メニューを見てみると、思っていたよりもたくさん種類があって、優柔不断な私にとってはかなりの難題だった。

和も洋も中も揃っていて、私にはもうどうしたらいいのか分からないくらい。

「もっちー君は？」
「俺は...エビチリかな」
「は、早いね...」
「アハ！Aちゃん、もしかして優柔不断？」
「ご名答です...」

これだから優柔不断は嫌だ。
人にも迷惑を掛けてしまうあたり、本当に駄目な性格を持ってしまったものだ。

もっちー君は「ゆっくり決めなよ」って気を遣ってくれるけど、その言葉に甘える訳にはいかない！と必死にメニューと戦う。

ジーっと見つめる。
とにかくメニューを見つめる。

「こ、これにします！」

私が指を差したのは、『和洋中ランチプレート』というまさに優柔不断の人必見のものだった。