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ICUに戻ると、優輔がゲームをしていているのを眺める。その横にはもう、暁人の姿はない。

三「背中クッション入れようか、疲れたでしょ」

優「・・・暁人は?全然帰ってこないんだけど」

三井先生が答えに困っていると橘先生が入ってくる。

橘「優輔・・・暁人君な」

優「うん」

橘「亡くなったよ」

優輔の手が止まる。

橘「頑張ったよ、凄く」

優「うん」

再びゲームする手が動き出す。

優「いいよ、帰って」

二人はICUから出ていく。たまらないだろうな。

A「・・・優輔」

優輔のもとに行き、そばにある椅子に座る。

私を見ても、ゲームを続ける優輔。何も聞きたくないんだろう。

だけどそれじゃあ駄目だと思い、優輔からゲームを取り上げる。

優「・・・なに?暁人が死んだことならさっき聞いたよ」

A「知ってる・・・・」

優「だったら何の用?」

今の優輔は昔の私に似ている。本当は物凄く辛くて、悲しくて、不安でいっぱいなはずなのに強がる。

A「暁人は、11歳でこの世を去った」

優「だからさっき聞いたってば」

A「私のお姉ちゃんも11歳で死んだの」

優輔の目が開き、何でと聞いてくる。

A「二人でボール遊びをしてたの」

昼間の公園でボールのキャッチボールをしていた。当時からあの人はお姉ちゃんしか見てなくて劣等感を抱いていた私だけどお姉ちゃんのことは大好きだった。

お姉ちゃんお姉ちゃんって、周りをうろつく私を邪険に扱うわけでもなくいつも相手してくれていた。

A「お姉ちゃんが投げたボールを私、取り損ねて公園の外にでたボールを無我夢中に取りに行ったの」

近づいてくるトラックにも気づかずに、

A「一瞬の出来事だった。誰かに突き飛ばされたって思ったときにはもうお姉ちゃんはトラックに轢かれてたの」

優「・・・・・どうしてその話を僕にするの?」

A「優輔には夢があるでしょ?」

昔教えてくれた優輔の夢。お父さんみたいな医者になること。

秘密だよって、教えてくれたんだ。

A「お姉ちゃんもね、医者を目指してたの。父親に憧れて」

必死に勉強していた。まだ11歳だったのに。

A「でも、その夢は一瞬にして消えてしまったんだ。私のせいで・・・」

優「・・・・」

A「私が医者になったのはね・・・・患者さんを救いたいからって思ったわけでも、親に憧れたからでもないの。ただ、お姉ちゃんの夢、だったから」


そう、ただそれだけなんだ・・・。

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作者名:隆佳 | 作成日時:2017年9月23日 22時

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