セレナーデ -恋歌-

Key Hiroomi.T ページ16

Key Hiroomi.T


｢はい。｣

コトっと置かれた見慣れない、まだ何もついてない鍵。




『えっと...』


私の家の鍵ではない。

もちろん、臣の家の鍵でもない。



はて？




｢家、借りた。｣



『...はて？』

小さい脳みそをフル回転させる。



お互い家はある。


互いの家は遠いわけでも近いわけでもなく。


ちょうどいい距離。


『えっとぉ...』


｢明後日、俺こっちに引っ越すから。｣

あー、なるほど。

新居の鍵ですな。


『大丈夫？荷造りとか...』

｢自分の心配しろ。｣

『え？』

｢Aも引っ越すから。｣


『...えっ？！』

またまた小さい脳みそをフル回転。




はい、パンク。


『え...わ、わたしも？！』


｢おん、A、いつ休み？｣


『あ、明後日...』


｢じゃ、同じ日に出来るな。｣


腕を組み、うん。と、勝手に頷き納得してる臣。




『あ、のぉ、...説明して頂けますか？』


恐る恐る聞いてみるが、


｢え？ヤなの？｣


と、的外れな回答。


『嫌じゃないです。』


｢じゃ、イイじゃん。｣


｢引っ越し業者頼むから。｣


何やらスマホをいじり何処かへ電話。


｢じゃ、そーゆーことでーよろしくお願いしまーす｣



そう言うと、電話を切る。




｢明後日、俺の後。だから夕方だな。引っ越しだから。｣


『えー……』


｢2LDKだし。いい家だったから。｣


『はぁ』


もう、溜め息しか出ません。



｢帰るとこ一緒だといいじゃん。｣


『う…ん。』


｢ヤなのかよ。｣


『心の、準備？』

｢いらねーよ、そんなん。｣



只今、木曜日の夕方。


明後日には引越し。



たまに着いていけない、



この彼の行動力。


END

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