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「……」
「これが君のお姉さんの最期の姿だよ。何かの役に立つかと思ってカメラを回していたんだ」
『帰らせて?本気で言っているんですか。…我々を裏切った以上、その首を繋がらせておくわけにはいかないんです』
『だったら、せめて……せめて最期に妹に会わせて。あの子には私がいないと…っ、』
『……お断りします。生憎ですが、僕はそんなに”良い人”ではありません』
ゆっくりと、引き金に添えられた人差し指が動き出す。自分の引き攣った呼吸音に紛れて姉の咽び泣く声が画面から聞こえてきた。
おねがい、やめて。私からお姉ちゃんをとらないで。
………姉は、バーボンに向けられた銃口を睨みつけ震えた声で必死に訴える。死が目の前に迫っているのだ。怖いに決まってる。
『お願い、します。…どんなに酷い殺され方をされても構わない。だから、っ妹に………』
ーーーーーーーー…悲痛な叫びは、いとも簡単に遮られた。
『……バーボン。これが貴方を殺す男の名前です』
彼は氷のように冷たい表情を一切崩さず、拳銃の引き金を躊躇なく引いた。
被弾した姉は声にならない呻き声を上げて苦しそうに涙を零している。急所を撃ち抜いたのかすぐに動かなくなってしまった姉を一瞥し、降谷は慣れた手つきで拳銃をしまった。
『…馬鹿な女だ。本当に』
ぶつん、と映像はそこで切れていた。
卑しい微笑みで顔を覗き込んでくる男に視線を送る余裕なんてなかった。頭の中がぐちゃぐちゃになっていて、色々な感情が混じりぶつかっている。
馬鹿みたいに呆然としていて、気が付けば自分の眼から一粒だけ涙がぽとりと落ちていた。
……嗚咽も喚き声も出ない。薄く開いていた唇は震えて言葉を紡ぐことすら出来なかった。
「…………、…」
心のどこかで、信じてた。
優しくて、思いやりがあって、誰よりも正義感が強い降谷。
もしかしたらこの人は、
姉を殺していないんじゃないかって。
あの時の言葉も嘘で、本当は違うんじゃないかって。
不安を見せれば『僕も一緒に寝る』と言ってくれた。涙を零した時は『どうしたんだ』と優しく向き合ってくれた。
ーー誰よりも真っ直ぐに生きる彼の信念を、私は知っていた。
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モミジ(プロフ) - この作品、最高です!この作品を読んで感動して泣きました。新作も読んで見ます!これからも応援しています! (2019年5月5日 16時) (レス) id: d4cb7d7d86 (このIDを非表示/違反報告)
ringo6349(プロフ) - こんばんは!完結おめでとうございます!ずっと私の中で物語を完結させたくなくて読めなかったのですが読めてよかったです。今回もとても素敵で好きなお話でした。本当にてなさんの書かれる物語が大好きです!忙しいので時間はかかるかもしれませんが新作も絶対読みます (2019年4月26日 22時) (レス) id: 66d3f8785b (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 華さん» 嬉しい限りでございます…複雑な心境を書くのがすごく難しかったです。コメントありがとうございますー!! (2019年3月29日 14時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - すごいです…。私、占ツクの小説で泣いたの、初めてです。夢主の悲しみとか嫉妬心とかが分かりやすくて、一気に読んでしまいました。完結おめでとうございます!! (2019年3月28日 21時) (レス) id: 1c08efcab1 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - 蓮-Ren-さん» ありがとうございます!そう言っていただけると凄く嬉しいです…(´∇`) (2019年3月27日 13時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てな | 作成日時:2019年3月21日 16時