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「ーーーーーー安室さん、最近元気ありませんね…」



恐る恐るそう肩を叩かれ、相変わらず鋭い人だなと苦笑してみせた。「実は…」と妻が家出したことを話せば梓さんはたいそう驚いていた。




「えっ、奥さんが出ていった…!?喧嘩でもされたんですか?」

「それが理由が分からなくて。滅多に感情をあらわにしないので、きっとよっぽどのことを僕がしでかしたんだと思います」

「お、思いますって……心当たりはないんですか」





心当たりなら幾らでもある。問題はどうしてあのタイミングで彼女が泣いていたのか、だ。確かあの日はポアロに行って、それから例の令嬢と………



………。





「心当たり…」





ーー相手を傷つかせないよう敢えて嘘をついていたとして、もしもその嘘に相手が勘づいてしまったら。相手はそれをどう思っただろうか?


仕事で女を口説くことになろうが抱くことになろうが、僕は今まで決して彼女にそれを伝えようとはしなかった。理由はもちろん、無駄な心配をかけさせないためだ。





「あぁ。次の日曜なんかどうかな?大切な娘さんを貰うわけだから、しっかり挨拶しないといけないな」





賢い彼女ならばこの会話を聞いたところで、”仕事として女を相手している”のだと気付いたであろう。
……だけど、僕から彼女にそう報告したわけでもない。


彼女は聡明で気を使う女だ。僕から口を開かぬ以上、それを”見なかったこと”にするだろう。






ーー僕達夫婦はいつだって平行線を辿ってきた。ただしそれは、彼女がずっと自分の気持ちを押し殺してきたからだ。






「あのっ、……安室さん」


「………はい?」





気付きかけていた理由に眉を寄せていると、不意に誰かに呼び止められた。注文かと思い首を傾げる。…が、どこか暗いその顔を見る限り注文ではなさそうだ。







「お話したいことが、あります。
…この後お時間ありますか」





そう言って頭を下げたのは、常連客の佐伯さんだった。

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HALO - お互い実力は認めあってますし大丈夫ですよ!!同じ似た境遇ですからきっと共有すれば乗り越えられる素敵な夫婦になれますよ♪♪ (2019年3月21日 0時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» そうですよね…!よいお友達になれそうです!きっと乗り越えられたら強い夫婦になれそうですね(´∇`) (2019年3月20日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 降谷さんもきっと誤解を知ったら赤井さんといい関係築けそうですよね!!だから夢主ちゃんも乗り越えて降谷さんと幸せになって欲しいなぁと思います! (2019年3月20日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» ごちゃごちゃしてまいりました…wそうなんです!降谷さんが赤井さんをはちゃめちゃに憎んでいるのと似ているような感じにしたかったんです(語彙力)憎すぎて毎日降谷さんのことばっかり考えてたらいいなあとか思っております (2019年3月19日 17時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 複雑になってますねw降谷さんもライが自殺を止められなかった事に対して殺したいほど憎んでいるのと同じな気もしますね!!夢主ちゃんが好きになってるなぁって思うし紙一重なのでしょうか? (2019年3月18日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年3月1日 0時

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