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「ただいま」
「おかえりなさい」
新婚生活も三ヶ月が経過した。未だに僕と妻は手も繋がないしキスもしないまま日常を送っている。
…僕が彼女とそういう行為をしない理由の一つには、彼女が自ら僕に求めてこないという決定的原因が含まれていた。
「私先に寝るね。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
寝室も別々で、夫が家に帰ってくるのは週に4か5日くらい。しかも早朝に出発して夜中に帰宅することが多い………そんな夫に求めるも何もないか。
仮にも一つ屋根の下で男女が暮らしているというのに、淫らな雰囲気は微塵もみえない。
…虚しいような安心するような。
恋愛不適合者の僕にとって、ここは恋人相手に無理をしなくてもいいという、いわば安堵が出来る環境なわけだ。
(………そうもいかないよな)
グラスに入ったワインを一口含み天井を見上げる。二階にある彼女の自室から足音は消えていた。多分寝たのだろう。
………ーーーーーー彼女は僕の妻で。僕は彼女の夫。
夫婦とはお互いを信じ合いお互いをサポートし合うものである。
……僕達は、それが出来ていないのだ。
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『悪い降谷…奴らに俺が公安だとバレた』
『逃げ場はもう、あの世しかないようだ』
「じゃあな。ゼローーーーーー……」
「ーーーーーーー……ひろ、…!!」
心臓に銃口を向けた幼馴染が、僕を見つめながら引き金を引こうとしたその時。引き攣った自分の声に目が覚めていた。
時計の針は午前2時を指している。…酒を含んだせいか寝てしまったらしい。
「……は、…はぁ……っ」
嫌な汗で濡れた髪をぐしゃりと掻き上げた。短く荒い自分の呼吸と、カチコチと一定のリズムで時を刻む音が、気分を不快にさせた。
もうヒロはいないのに。どうしてアイツは夢にまで現れてくるんだ。
「っ、クソ………、」
不安定になった気持ちをどこかにやりたくて、腕の中に頭を突っ伏して力なく塞ぎ込んだ。
(……会えたら、いいのにな)
死んだはずの彼に会えたらどれだけ幸せだろう。
叶うはずのない願望をつい頭に浮かべてしまうほど、僕は疲れていた。
「…………」
ーーーーーーーー公安である僕が、全く気付けなかったのだ。
「……、…A?」
無表情で僕を見下ろす彼女の存在に。
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HALO - お互い実力は認めあってますし大丈夫ですよ!!同じ似た境遇ですからきっと共有すれば乗り越えられる素敵な夫婦になれますよ♪♪ (2019年3月21日 0時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» そうですよね…!よいお友達になれそうです!きっと乗り越えられたら強い夫婦になれそうですね(´∇`) (2019年3月20日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 降谷さんもきっと誤解を知ったら赤井さんといい関係築けそうですよね!!だから夢主ちゃんも乗り越えて降谷さんと幸せになって欲しいなぁと思います! (2019年3月20日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» ごちゃごちゃしてまいりました…wそうなんです!降谷さんが赤井さんをはちゃめちゃに憎んでいるのと似ているような感じにしたかったんです(語彙力)憎すぎて毎日降谷さんのことばっかり考えてたらいいなあとか思っております (2019年3月19日 17時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 複雑になってますねw降谷さんもライが自殺を止められなかった事に対して殺したいほど憎んでいるのと同じな気もしますね!!夢主ちゃんが好きになってるなぁって思うし紙一重なのでしょうか? (2019年3月18日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てな | 作成日時:2019年3月1日 0時