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*
ーーAは今頃何をしているだろうか。
「………」
ようやく3つの仕事をやり終えて、マンションの駐車場から夜空を何となしに見上げた。…曇っていて星一つ見えやしない。
(きちんと彼女に話すべきだよな。
……まずはどこに逃げたのかを探さないと)
彼女が家出をして三日が過ぎた。いや、今ちょうど四日ぐらいになったか。午前1時を回った腕時計を見下ろし思わず眉を寄せた。
「ーーただいま、……ハロ?」
今日も『おかえり』という声は聞こえてこない。だが、散歩連れてって!としがみついてくるはずのハロの姿までもが見えないとは、何かあったのだろうか。
ただ単に寝ているだけかもしれない。…念の為足音は立てずリビングに向かう。
(電気はついていないな。……大丈夫か)
人の気配もハロもいないようだ。リビングにいないということは、きっとまた僕のベッドで眠っているのだろう。
一応様子を見に行こう、と部屋のドアを開けた。
…………ん?
疲労かストレスが原因なのか知らないが、布団が膨れ上がっている気がする。小さな寝息が微かに聞こえてきた。
「……、んん」
ーー恐る恐る布団をめくってみれば、家出中の妻がぐっすりと眠っていた。その腕の中にはハロが気持ちよさそうに寝入っている。
(……帰ってきてたのか)
どうして僕のベッドで寝ているのか。いつ帰ってきたのか。聞きたいことは山ほどあったが、彼女の寝顔を前にすれば全てどうでもよくなってしまった。
この子は他の誰かとはまるで違う、危なかっしい魅力を持っている。だからこそ惹かれたのかもしれない。
「おかえり。……A」
「確かに僕は、君のことをまるで分かっていなかった。
今まで不安な気持ちにさせていて、本当にごめん」
抱き寄せれば彼女の小さな体は腕の中にすっぽりと収まった。
当然僕の言葉に頷くことも首を横に振ることもしなかったが、少し呼吸のリズムが乱れた。…狸寝入りは部屋に入った時から分かっていたが、特にそれを咎めようとは思わなかった。
ーーむしろ、目を瞑ってくれていた方が好都合だ。
「………不甲斐ない夫を、許してくれ」
頬にたれていた髪を耳にかけてやり
薄く開かれた唇を親指でなぞる。
ーーそして、それでも眠っているフリを続けた彼女の口に、触れるだけのキスをした。
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HALO - お互い実力は認めあってますし大丈夫ですよ!!同じ似た境遇ですからきっと共有すれば乗り越えられる素敵な夫婦になれますよ♪♪ (2019年3月21日 0時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» そうですよね…!よいお友達になれそうです!きっと乗り越えられたら強い夫婦になれそうですね(´∇`) (2019年3月20日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 降谷さんもきっと誤解を知ったら赤井さんといい関係築けそうですよね!!だから夢主ちゃんも乗り越えて降谷さんと幸せになって欲しいなぁと思います! (2019年3月20日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - HALOさん» ごちゃごちゃしてまいりました…wそうなんです!降谷さんが赤井さんをはちゃめちゃに憎んでいるのと似ているような感じにしたかったんです(語彙力)憎すぎて毎日降谷さんのことばっかり考えてたらいいなあとか思っております (2019年3月19日 17時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
HALO - 複雑になってますねw降谷さんもライが自殺を止められなかった事に対して殺したいほど憎んでいるのと同じな気もしますね!!夢主ちゃんが好きになってるなぁって思うし紙一重なのでしょうか? (2019年3月18日 23時) (レス) id: d6476dbe7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:てな | 作成日時:2019年3月1日 0時