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*


「っくしゅ!!」



うっかり足で水たまりを踏んでしまい、
びっしょりと濡れた脛を見てため息がでた。

ついてない。



(………え?)



用事も済んだことだしさっさと帰ろう、と
マンションの階段を登り終えた先に
暗くて見えづらいが確かに何かがいるのだ。

それも私の部屋の前。


ホームレスか、酔っ払って家を間違えた馬鹿か
どちらにせよ早急にどいてもらわないと
私が凍え死んでしまう。



「すみません。大丈夫ですか」



項垂れたその人の肩を緩く揺さぶって声をかける。
夜目では男か女かも分からなかったが
近くで見たところ体格的に男のようだ。


…………



全く起きる気配はない。


ふる、と身震いがして
体を抱きしめるように腕を回す。
早く部屋に入りたいが、どうしよう。



「あの……、ッ!!」









ーーー抱き締められた。


得体も知れない、顔も知らない男に。
痛いほどぎゅうぎゅうと抱き着かれて
小さくすん、と匂いを嗅がれている。



こういう場合110番をした方がいいのだろうか、と
ばくんばくん鳴り響く心臓をBGMに
スマホを取り出すか迷った…が




(………金、髪?)




ようやく慣れてきた視界にブロンドの旋毛が見えた。
丁度胸の辺りに顔をうずめている男は
甘えるように背中に回した手で布地を握る。




「A〜……」





酔っ払いでもホームレスでもなく、
ただの馬鹿だったようだ。

微かに安心した気持ちを隠して
彼を引き離そうとしたところで、
自身の手のひらに何かの液体がべとりと付いた。




(…生臭い)



すんすんと匂いを嗅いで、
もう一度顔の見えない旋毛をじろりと睨む。

私が帰ってこなかったら出血多量で
死んでいたかもしれないのに、
一体この馬鹿は何を考えているのやら。




「…はぁー……もう」




取り敢えず動く様子のない彼の腕を肩に回す。
十分近くかけて立ち上がって、
どうにか玄関の扉を開けた。




相変わらずの確信犯だ。

私が怪我を負った彼を見捨てられないと
見破った上で、ここにやって来たのだろう。

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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時

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