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you side



「ーーーーおやすみなさい」



中身は18歳といえど子供は子供。話の途中で
うとうと船を漕いでいた哀は、案の定
5分も経たないうちに寝落ちてしまった。

テーブルに突っ伏した彼女を寝室のベッドに運び、
現在留守にしている家主の博士の帰りを一人待っていた。




「…………」







『逃げよう!!』




あの頃と変わらない。
正義感が強くて勇気があって、
誰よりも私を守ろうとしてくれた人。


隣にいられればそれでよかった。でも、





(……彼の、ため………)




そう。彼のために、私はーーーーーーーー…








忘れかけていた堅い決意が頭をよぎった刹那。
ピンポン、と軽快なインターホンの音で
はっと顔を上げた。来客のようだ。




(夜の9時……一体誰が)




阿笠博士が帰ってくるのは
9時30分と聞いていたし、予定を
早く切り上げた可能性は極めて低かった。

モニターはないため仕方なく
ドアを数センチ程ゆっくりと開けてみれば、





「……おや?」



「…………」





鍋を持った、男がいた。





(哀の知り合い?……それにしては年齢が離れてるか)



博士ならともなく、鍋を持って夜9時に家まで
やって来る知人など警戒するに越したことはない。
男は薄い笑みを浮かべて私を見下ろしている。




「…博士なら留守ですが。
何か用があるなら明日にして頂けますか」

「そうなんですか?実は夕飯を
作り過ぎてしまいまして…
よかったら少し食べて貰えますか?」

「結構です」




怪しい。

糸目の長身の男は頑なに部屋の中へ
入れようとしない私に首を傾げて、
「ところで…」と話を続けた。

ろくに話を聞かないところは"彼"を彷彿とさせた。




「僕は隣の家に居候している大学院生でして。
何度かお裾分けにここへ来ているのですが
……貴方とは初めましてですよね?」


「………ええ」


「失礼ですがお名前を伺っても?」




隣の家、というのは高校生探偵工藤新一の家だろうか。
未だ名乗らない彼は、私を探るように
さり気なく質問を織り交ぜてくる。









「人に名前を聞く場合、
自分から名乗るのがマナーでは?」


「………ホォー…」





ちらりと垣間見えた翡翠色の瞳が、
獲物を見つけた虎のように細められた。

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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時

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