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「………泣いている女性がいたら、
黙って部屋を出ていくのがマナーです」



ふわふわ浮いていた意識を引き戻し、眼前に
立ち塞がる長身男を上目で見る。目は合ったが
彼は私ではない、"誰か"を見ているようだった。



「生憎だが、泣いている女性を
放っておけない性分なんでね…」



堅苦しい口調が崩れたと思えば、
小さな子に目線を合わせるようにしゃがむと
その翡翠の瞳で私を静かに捉えた。


涙が乗った睫毛をぱちぱちと何度か瞬かせる。









「……コンシーラー」


「…………は?」



微かに鼻をくすぐった馴染みのある匂い。
しんみりとした雰囲気を壊す発言に
沖矢が片眉を上げた。


僅かに伏せていた瞳を再度彼へ戻す。




「隈を隠すためですか」



「……おや、目立たないよう施したつもり
なんですがね。どうして分かったんです?」

「無香料の化粧品でも匂いがするものはあります。
………けれど、糸目なら多少隈があっても
目に止まることはほぼないと思いますが」




しゃがんでくれたおかげでよく顔が見える。
すっかり涙は乾き始めて、
より怪しさが増した沖矢昴を尋問した。




「個人の趣味というなら
ファンデーションの匂いも見逃せますが…
今日は気温も高く風も吹いていない」


「…それが、どうかしました?」







「厚手のハイネックなんて着てるのは
余程の寒がりか、それとも何かの理由で
首元を見られたくないという人間…」




春が近いからか今日は20℃を超える快晴だった。
どう見ても沖矢が身につけているセーターは
真冬向けのものである。それもハイネック。


胡散臭い雰囲気も、博士が留守なのに
ここを立ち去ろうとしない理由にも
何かわけがあるのだろうか。




(ーーーーーーー……もし、それが)





「………貴方は先程から
私じゃない"誰か"を見ている」






奥で眠っている彼女だとするなら、

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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時

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