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Furuya side


まるで僕から逃げるように部屋を去った
彼女の面影をぼんやりと浮かべていた。
昔から彼女のあの言葉には、どうも弱かったのだ。



『お願い』








「……狡い女だな」




流石の僕でも心が折れかけてしまいそうだった。




正直離婚の原因は心当たりがありすぎて分からない。

立場上街で会う時は初対面で
接しろと言っていたし、デートも
ドタキャンが多かったり途中で抜けたり、

もしAじゃなかったら頬を引っぱたいて
こう言うだろう、「私と仕事どっちが大切なの」と。



だけど彼女は何一つ僕に悟らせることなく、
手料理の中に入れた睡眠薬で僕を眠らせ
離婚届を提出してしまった。


一方的な離婚届の提出は裁判等を通して
相手が離婚が無効であることを同意すれば
取り消される…のだが。

そんな時間は僕には無い。というか
まず同意してくれるわけがないのだ。







「ーーーーーー頼むよ……」





僕の隣で、普段誰にも見せない柔らかな微笑を
浮かべていたAを心の底から愛していた。

今も、これからもずっと彼女を愛せる自信がある。


それなのに君は僕を見ると辛そうに顔を歪めるのだ。

バーボンとして任務に失敗した僕が一目散に
向かったのは、病院でもなく警察庁でもなく
ーーーーーーー彼女の家だった。


決して傷を負った人間を、
見捨てたりしない人だと知っているから。






皺が寄る眉間を抑えてどうしたものかと
頭を悩ませていれば、突如ガタンッ!!と
大きな物音が部屋の外から聞こえた。




「っ、!?A……!!」









怪我の痛みも気にとめず慌てて寝室を出れば、
さっき部屋を去ったはずの彼女がいた。

しかし気を失っているようで息も荒い。
紅潮した顔を見れば、さっきの
物音の正体は一目瞭然だった。



「……、高熱だな」




前髪をかきあげて額に手を乗せる。
どうやら僕よりも重症のようで、
息苦しそうに喘ぐ彼女の身体を片腕で起こした。









(………気付かなかった)




気付けなかったのだ。

いつも無理して俺を頼ろうとしない、
不器用な彼女が限界だったことに。

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てな(プロフ) - まゆさん» わーありがとうございます!気づくの遅くなってすみません…!感動していただき嬉しみです(´∇`) (2019年3月10日 22時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
まゆ - 完結おめでとうございます^_^面白かったです^_^最後は、すごく感動しました!これからも、頑張って下さい^_^ (2019年3月7日 14時) (レス) id: 406c27ad01 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - かずささん» ありがとうございます!結構端折ってた部分もあったので過去エピソードとか結婚後のお話を時間があったら書いてみたい!!と思ってます(゜▽゜) (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
てな(プロフ) - れいさん» ぴえありがとうございます〜!50話を超えてしまったので気が向いたら続編を作ってみたいなとか思っております… (2019年2月1日 23時) (レス) id: 46f0755694 (このIDを非表示/違反報告)
かずさ(プロフ) - 私も結婚後の生活の話が読みたいです!できるならお願します! (2019年2月1日 22時) (レス) id: 189adfe0dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:てな | 作成日時:2019年1月20日 0時

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