【名探偵コナン】プリンスはマドンナが好き【降谷零】

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furuya side



「安室さんそろそろ休憩したらどうです？
熱中症にでもなったら……」

「あぁ、……そうですね。じゃあお言葉に甘えて」


空はまだ明るい。蝉の音が酷く耳に突き刺さるが
それでも小学生は元気にランドセルを背負いながら
走り回っている。若いっていいな。

と、29歳独身がしみじみと
そんなことを思っていれば、
チリンと鈴を鳴らしてお客さんが入店してきた。



「いらっしゃいませ……、あ！Aさん！」


「…こんにちは。ちょっと来て」



少し仮眠を取ろうと
店の奥に歩こうとしたその時、
柔らかな手に手首を掴まれた。

キョトンとした俺に構わず
ズカズカと店を出ていき
薄暗い路地裏に連れてきた彼女は、
やっぱり先日会った麗しのマドンナだった。



「…まさか、お前から来てくれるなんてな」


「馬鹿じゃないの。……
それより、散々言われてるけど」


「……何が？」


「アンタのこと！！」



目を逸らしては俺を見上げ
また逸らす工程を繰り返していたAが、
俺の質問に激昴した様子で答えてくれた。

言っておくが怒った顔も可愛い。




「……バーボン、……コナンくんから聞いたよ」


「………」




聞けば、どうやら彼女は
組織のことを知っているらしい。

誰から聞いたかは教えてくれなかったが、
ベルモットの事もジンやウォッカの事も
彼女は全て把握していた。




「アンタがバーボンってわかって以来
私までさりげなく事情聴取されるんだよ。
人に迷惑かけないでくれる！！？」


「あ、あぁ……？」



人の話を聞きなさい！と
軽く小突かれた上に上目で睨まれた。
可愛いことこの上ない。

………だが。




「……なんでそう簡単に信じるんだ？」


「は？」


「俺が潜入捜査をしてる…と言っているだけで
俺は本当に組織の探り屋バーボンかも
しれないんだぞ。分かっているのか？」



そう、彼女はあの現場を見ていないとはいえ
コナンくんからとうにバーボンとして
本格活動していることを聞いているのだ。

公安のゼロであることも、彼女には話していない。



＿＿＿けれど、Aは首を傾げたままだった。





「……降谷はバーボンじゃないよ。

…だって幼稚園の短冊に書いてたでしょ、
将来は絶対警察官になるって」



警察大好きゴリラに悪の組織は務まりません。と
そっぽを向いてしまったAに、

心臓を銃弾で撃たれたような衝撃を受けた。





(………覚えてくれてたんだな)





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