4話 BOSS SECRET ページ5
空を切る音がした。
もう、どうにでもなれと思う。俺はこれまで何も悪いことをしてはいなかったのだから。本当に女であることを知らなかったのだから。
俺は何も悪くは無い。
「芥川くん?何をしているんだい?」
この声音で空気を切る音への解釈が変わった。
運動ができる若い人間が多く集まるポートマフィア。ここで、低く落ち着いていて、それでいて人を従わせる声。首領であった。
空を切る音は芥川の異能に関するものでは無い。ピンチ脱出の合図であったのだ。
太宰と俺と2人に話す前に伝えたいことがあると首領は言いながら、芥川をドアから遠ざける。
芥川が離れたのを確認してから、
「入っても大丈夫かい?」と優しく声をかける。
鏡の前でもう一度身だしなみを確認してから、首領の待つドアの鍵を開ける。
首領は柔らかな笑みを浮かべている。その手には、桜を思い浮かべるような服を持っていた。それはエリス嬢用にしては大きい。
首領「もう気づいたのでは無いかと思ってね。」
首領は服を広げる。少し短めのワンピース。シンプルで上品さがありながら華やかであった。
目を大きく開ける。首領は医者であるのだから女だと分かるのは当然だが、なぜ今日女であることを気づくと分かったのだろう。
もう一度微笑まれる。
首領「気づいてしばらく落ち着いてから言おうと思っていたのだけど、生憎君に女になってもらわないとすまない任務が出来てね。」
目を大きくひらく。それはつまり、ハニートラップということであろうか。
首領「ふふ。流石に最初から甘い罠にかけてもらう気は無いよ。仕事ばかりで恋愛もなかっただろうからね。」
太宰くんと話す部分と重なってくるから、と首領はここで話を切った。
そんなこと言われてもと思っていると、先程のワンピースを渡される。
これを着てから部屋に来いということか。
この服を着ると、太宰にどう言われるか分からない。
もし変だと言われたらどうしようか。
気持ち悪いと言われたら立ち直れないかもしれない。
…怖い。怖い。今更であるが、嫌われたくは無い。
だが、俺は首領の最後の言葉にかけてみることにした。
「案外私と太宰くんは似ているところがあってね、分かることも多いのだよ。例えば、その服を着た美しい君に魅了されることとかね。」
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こんふぃでっ!!(プロフ) - 眠る猫さん» ありがとうございます!! (2023年1月27日 16時) (レス) id: dbf81f6428 (このIDを非表示/違反報告)
眠る猫 - あああ,,,もう好きだわ,,,更新楽しみすぎる (2023年1月25日 22時) (レス) @page7 id: cd1a79a794 (このIDを非表示/違反報告)
こんふぃでっ!!(プロフ) - 水瀬琥雪さん» ありがとうございます!!面白い作品を更新できるよう精進していきます! (2023年1月23日 15時) (レス) id: dbf81f6428 (このIDを非表示/違反報告)
水瀬琥雪 - めっちゃ面白かったです!!成り代わりって、前世にアニメとか見てていきなりとかありますけど…これはいきなり思い出す系でとてもいいなって思いました!更新頑張ってください!! (2023年1月23日 7時) (レス) @page4 id: 27e17eb645 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こんふぃでっ!! | 作成日時:2023年1月22日 20時