世間では桃色王子とか言われてるけど私にとっちゃただの腐れ縁

初！ライブ観戦 ページ18

『うわ…すごい人』


私は今日、初めてさとみのライブを観る



観に来いとずーっと言われていて今回それに折れた感じだ



父「A、惚れちゃうぞ〜」



父よ、しょっちゅうそれを言うが100パーないから心配しないでいただきたい




会場は満員のようでたくさんの笑顔が溢れている






私達家族は特別に用意された席に通された



低いコンクリートの仕切りで囲われた空間



なんかソワソワして落ち着かな…


《わぁぁあ！！




ふっと会場の明かりが消えて眼下にはファンが持つペンライトの波


へ…


あまりに綺麗で鳥肌が立つ





正面のステージに…いた。さとみだ



スパンコールがたっぷりついた衣装を纏って、見たことのない笑顔を見せている





うちのコタツでみかんを摘むあのさとみと

ステージの上でキラキラ輝いているこのさとみが同一人物って誰が信じる？




私は息を呑んだ



こんなすごいんだ、私の腐れ縁…




ダンスも、歌も想像していたよりずっとずっとすごくて

なんだか泣きそうになった




なにより。見ているファンは本当に嬉しそう！



こんなにたくさんの人を幸せにできる幼馴染…最高かよ






母「あ、さとくん来た」



さとみが関係者席の正面に立つ




母「あ！手振ってる」



こちらに向かってブンブン腕を振っているさとみ





ブンブン

ブンブン

ブンブン……




母「……んね、Aちゃんに振ってるんじゃない？

振り返してあげたら」





へ？





わたし？





『あ？私に振ってくれてるの？』




私は小さく手を振った




それを見たさとみは“チッ”みたいな顔をして元の場所に戻っていった



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