お見舞い ページ44
「…はぁーぁ、暇」
横腹痛いし、兄にこっぴどく怒られるし、理鶯の兄貴には良くわからんもの頂いたし…左馬刻の兄貴を困らせてしまうし…わがままはまだ治りそうにない
結局、急所はギリギリズレていた。出血もさほど問題なく、数針縫って終わった。一週間もかからず退院できるそうだ。
「…二郎にまた怒られちゃった」
トイレついでに携帯の使えるスペースで連絡を確認した。なんやかんや、また入院してしまった事を話してしまい、怒られた
「あぁー…まだズキズキする…いだぁーい…」
地味、ではないが、意識がある時の痛みほど耐え難いものはない、耐えれるが痛い、が一番痛いと私は思う
「…お兄ちゃん、大丈夫かな」
理鶯から聞いた話、始末書とマスコミにおわれて大変だとか…直々の部下だ。それもそうだろう、なにより、身近な女性が依存者だったという事実、兄だって相当応えてる
「あ、あった…」
聞き覚えのある声、驚いて声のする方、病室のドアに首を向ける、すると、時差もさほどなくコンコン、とドアの叩く音、「どうぞ」と言うと、躊躇しながらドアが開く
「し、失礼します…」
「二郎!?」
顔が出てきて驚きで飛び起きる、痛みなど信じられないほど飛んだ。
「な、なんで…」
嬉しさと驚きを胸一杯に感じ、もじもじとしている二郎を見つめた。
「ほ…惚れた女の見舞いに来るのは、ったりめぇだろ…」
目を背け、頬を赤く染めながら、小さい声だがはっきりと言った。
その一言と顔は私の胸にぶっ刺さり、「あぁ…生きててよかった」と改めて感じたのであった。
「ほら、これ、手土産」
「やった!ここのお菓子大好きなの、ありがとう!」
紙袋を受け取り、中を見ると、焼き菓子の詰め合わせだ。
二郎はAの喜ぶ顔を見て嬉しくなった。いつもと違って弱々しい姿の彼女の力になりたいと思った。
「飲みもん買ってくる、何飲みたい?」
「いいよ!気を使わないで」
そう言うと、少しむっ、とする、年下なんだなぁ、と実感したが、そんな余裕ぶっこいた思考は、二郎のとった行動でできなくなった。
彼は、私の前髪を搔き撫で、軽く、オデコにキスをした。
「お茶でいいよな?…すぐ戻るから」
「…はひ」
おでこを手で押さえ、病室を出る彼の背中を見送る、しばらく余韻に浸り、顔に熱が集まるのを感じた。
「反則…!!」
静かに悶絶した。
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惟(プロフ) - 山田名前 になった時なんか泣きそうになりました… (2020年10月7日 1時) (レス) id: afe49cdc60 (このIDを非表示/違反報告)
アホの化身 - 末永くお幸せに! (2020年10月4日 18時) (レス) id: 62410cc231 (このIDを非表示/違反報告)
コムネナ(プロフ) - 尊い... (2020年2月15日 15時) (レス) id: ba9606a4c3 (このIDを非表示/違反報告)
ピッピ - とっても面白かったです! そして、感動しました!! (2019年7月22日 20時) (レス) id: 1762daf58c (このIDを非表示/違反報告)
蠍闇猫(プロフ) - 最っっっっっ高(語彙力) (2018年12月6日 1時) (レス) id: 8685334520 (このIDを非表示/違反報告)
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