This is our love story 【NEWS】

. ページ44

「なんで…LINE読まなかったじゃん」

「既読はつけられなかったけど
通知はちゃんと見たから。それに」


キャリーケースのストッパーをかけ
靴を丁寧に揃えて脱いだ彼は
まだパジャマを持ったままの私を
そっと抱きしめた。


「こんな寂しがってる彼女、
放っておけるわけないでしょ？」

「…だったらもっと早く
会いに来てくれても、よかったのに」

「ごめん、地方でのロケ続きで」


彼の逞しい腕に強く抱きしめられたまま、
10分は経っただろうか。
風呂が沸いたことを知らせる音楽が
ふたりの空間に流れる。


「お風呂、入らなきゃ。
化粧も落としてないの私」

「ん、わかった。俺外で入ってきたから
先に着替えてベッド入っとく」


ふわっと腕を解かれ
私は風呂場に、彼は寝室に。


待たせてる間に寝られると嫌だから
いつもより早く洗って
冷たいって怒られたくないから
いつもよりゆっくりお湯に浸かる。


まだ髪が濡れたまま寝室に向かうと
彼はベッドにちょこんと座って
何やら雑誌をペラペラとめくっていた。


「寝転んでくれててよかったのに」

「先に寝ちゃったら申し訳ないし
俺も嫌だから、ね」


雑誌から視線を私に移すと
濡れたままの髪が嫌だったのか
ドライヤー持っておいで、とだけ言い
また視線を雑誌に戻す。


言われた通りドライヤーを持ってきて
彼の座るベッドのそばに座ると
彼はベッドから降り、
私からタオルを奪って優しく髪を乾かし始めた。


私の髪が乾くとすぐ彼はベッドに戻り
私も彼に続いてベッドに入る。

さっきは無かったぬくもりが
手を伸ばせばすぐそこにある。

「私、幸せ者だなぁ」

ほぼ無意識のままつぶやくと


「もっと幸せにしてやる」

と囁かれ、今までにはなかった
優しく濃厚なキスが降り注ぐ。

驚く私を見て微笑む貴久は
天使か、悪魔か。


fin.

s.k after story→←t.m after story

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す