短編 1話『千本鳥居で浮かれ気分』 ページ31
ブライダル企画として、ブライダル修学旅行というどう足掻いても他の企業と被ることはなさそうな物を考案された時は、どういうこと？と思ったのだが、先方は乗り気で、ESでも何人かP機関の人員が駆り出された。
場所は京都。
2日の夜、伏見くんの提案で、千本鳥居を見に夜の神社へと足を運んでいた。メンツは私、あんずちゃん、守沢先輩と斎宮先輩と乱先輩、風早くんに伏見くん、そして遊木くん、ジュンだ。神社は申し訳程度に灯りはあるものの、全体的に暗く、肝試しのような雰囲気が漂う。
｢そこの茂みなんか出そう｣
私がそう言いながらなんとなく茂みを指刺せば、前にいた後ろにいるビビり散らかしている守沢先輩がビクッと震えて、指を指した方とは反対側に飛び上がった。
｢ヒッ…！｣
｢守沢先輩の不安煽ってどうすんですか｣
隣にいたジュンはため息をつき、私の頭に軽く手刀を入れた。全く痛くないし、頭にとんっ、と当たった程度だったけれど、私はジュンに対して大いに抗議した。
｢あっ、暴力！暴力反対！！｣
｢ノン！少しは静かにしたまえ｣
斎宮先輩は呆れたようにそう言った。私は静かにしていたのに、何故かついでに怒られて解せぬ。逆に斎宮先輩に噛み付いてやろうかとも思ったが、みかくんの手前その考えは隅っこに追いやった。ふーんだ、と思いながら、最後尾で周りを見ている乱先輩の方へと向かう。
｢ここまで騒がしいと、もし霊の類がいたとしても、寄ってこなさそうですね｣
｢そうですな。やはり皆で来て正解でした｣
伏見くんと風早くんはそう言い合いながら微笑みあっていた。秋になり、少し冷たくなった風が千本鳥居の上に生い茂る紅葉を揺らしている。ライトに照らされている木の葉は、千本鳥居と同じ朱色で、景色は夜であっても色鮮やかだ。
｢ナギ先輩のとこ行くんすか？｣
｢うん。ちょっと声掛けてくるね｣
風景に見入っているのか、少し歩くテンポが遅めの乱先輩。一本道で迷子になることはないが、少しだけ声をかけて見た方がいいかと思い、進んだ道を戻ろうとする。
｢俺も行きますよ｣
｢平気。遊木くん1人で寂しそうにしてるから、そっち行ってあげな｣
実際に遊木くんはあんずちゃんとの会話がある程度終わってしまったのか、少し背中は寂しそうだった。この企画に巻き込んだのはジュンだ。構ってあげるのが筋だろう。ジュンは少し不服そうな顔をしつつも、結局遊木くんに話しかけに向かっていた。
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作者名：ﾓﾓ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kid0019/
作成日時：2020年2月24日 11時
