☆16話 ページ16
「ねぇねぇジュンくん」
「ッ!?」
帰ったと思った人物の声が耳元で名前を呼ばれる。軽く背筋がゾワッとして後ろを振り向けば、ニコニコと微笑むおひいさんが当たり前のように立っていた
「おひいさん、帰ったんじゃ…」
「スマホ忘れちゃって取りに来たらジュンくんがなんかブツブツ言ってて気味が悪かったからね。話しかけてみたね!」
「…最悪だ」
握っていたタオルで驚いたことによって出てきた冷や汗を拭き取る。あの独り言を聞かれたのだろうか、だとしたら恥ず過ぎるでしょ。意味は伝わらないとは思うけれど、まず独り言を聞かれたこと自体が割と恥ずい
「ねぇ、ジュンくん」
「…はい?」
「どういうつもりなのかはわからないけど、彼女が泣いたのはジュンくんの望み通り?」
おひいさんの言葉に目を見開く
彼女、もしかしなくてもAの事だろう。まさか見られてたのか、まぁ涙目で走り去っていったからその時にAとすれ違ったのかもしれない
その上でさっきの独り言を聞かれていたのなら、Aが泣いていた理由は俺にあることは察せられるはずだ。しかもおひいさん何かと変なところで勘が鋭い時があるし
「お互いのために、とかそんなこと思ったりしてる?でも悲しませちゃっているなら意味が無いね!うーん、これは悪い日和」
「……俺は、間違ってるですかねぇ」
おひいさんと目を合わすことはしなかった。けれど、縋るような気持ちでおひいさんにそう質問する。藁にもすがる思いで、少し話すことに躊躇いはあれども おひいさんに聞いた。
「それはジュンくん自身が考えるべきだね!若いうちは大いに悩んだ方がいいからね」
そう言うと、おひいさんはカバンの横に置き去りになっていた自身のスマホを手に取りポケットにしまう。俺から背を向けていた姿勢からクルッと綺麗に回って慈しみの目線を俺に向けた
「ジュンくんはまだまだ蕾。綺麗な花を咲かすにはもっと時間もかかるし、経験も不足しているね!」
俺の方に一歩、また一歩と確実に近づいてくるおひいさん。普段なら俺も少し無意識に後ろに下がってしまうのだが、今は後ろに行ってはいけない気がした
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作者名:モモ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kid0019/
作成日時:2020年2月24日 11時