☆1話 ページ1
｢……｣
朝。２年Ｂ組から聞こえるいつもの大きな声で挨拶が響くが、今日はその声が響かない。その代わりにあったのは、普段ならめんどくさがっていた仕事を黙々とこなすAの姿だ。
B組の皆は、信じられないという目でAの方を見つめる。当の本人であるAは、気づく様子は一切なかった
そんなB組の中に、頬に手を添えてAのことを心配する鳴上嵐と Aをちらちら見ながら貧乏ゆすりをしている大神晃牙の姿があった。
｢やっぱりおかしいわよねェ…｣
｢…なんで俺様に聞くんだよ｣
嵐は晃牙の机の後ろに立ち、そのまま話しかける。クラスメイトのほぼ全員がAのことを驚きの目で見ている中、心配そうにしているのは両手で足りるほどの人しかいない。その中でもさっきからチラチラとAの方を見ている晃牙に、嵐は話しかけたのだ
｢え？だって、晃牙ちゃんがうちのクラスで1番気にしてるじゃない？｣
｢あぁ！？んな訳ね〜だろ！！｣
頬を少し赤らめながら嵐にキレる晃牙。普段なら"まぁまぁまぁ"となだめに入るAだが、晃牙の声すら気づかないのか、そのまま書類を見つめていた。
｢……チッ｣
｢あら、晃牙ちゃん？｣
嵐の呼び止めにも反応することはなく、晃牙はズカズカと荒々しく足を進め、Aの背後に立つ。普段なら気配に気づくAだが、相当集中しているのかやはり気づく様子はなかった
｢おい｣
｢…｣
｢っ、おい！！俺様を無視すんじゃね〜！！｣
晃牙はAの椅子を割と勢い任せに蹴りあげる。流石にその衝撃にAも気づき、驚きの声を上げて蹴ってきた晃牙の方をくるっと向いた
｢うわっ！？…わ、ワンコくん？｣
｢誰がワンコだ！狼だっつってんだろ！！｣
｢あははっ、ごめんごめん｣
先程の沈黙はなんだったのか、喋りかけてみれば普段と変わりのない様子にクラスにいる人達が安堵の息を吐いた
だが、近くにいて鼻が利く晃牙やメイクに詳しい嵐には、メイクでクマを隠していることは丸わかりで、その痛々しい姿に表情がこわばった
｢で、何か用？｣
｢あ？｣
｢は？｣
晃牙は、取り敢えずAに話しかけることだけを目的に椅子を蹴ったので特に用事があるわけもなく、Aは少ししかめっ面で"なに、なんも用事ないの？"と晃牙に聞いた
｢……いや、｣
一瞬怯んだ晃牙だったが、すぐに体勢を立て直しAに高圧的な表情を浮かべて思いっきり指を指す
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作者名：ﾓﾓ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kid0019/
作成日時：2020年2月24日 11時
