用心 ページ11
玲於「確かに今日はエイプリルフールだけどさ、お前の誕生日でもあるじゃん」
「まあ...うん」
玲於「そんな日にこんな手紙寄越すなんてさぁ...なんか、タイミング図ってる感じじゃね？」
「大袈裟だなぁ」
あたしは、玲於のあり得ない妄想に溜め息をつく。すると
涼太「A」
涼太が凛とした声であたしの名を呼ぶ
涼太「玲於の考えすぎだと思うけど...用心に越したことはないよ。気をつけて」
「......うん」
真っ直ぐ見つめる涼太の眼差しが、あたしを素直にさせる
玲於「つか、お前の好きな奴って誰？」
玲於が指摘されたくないことを、再度問う
「だから！ そんな人はいません！」
玲於「ホントかよ？ 今日はなんてったって、エイプリルフールだからな」
「勝手に言ってろ！」
口角を上げ意地悪く笑う玲於に、冷たい視線を送って、あたしはその場を誤魔化した
4月1日。エイプリルフール。自分の誕生日
あたしは、毎年、嘘をつく
4月1日が嫌い。自分の誕生日が嫌い
だけど、玲於の誕生日でもあるから、そんなことは口に出せない
誕生日を祝いながらも、ふと曇りそうになる表情を、嘘の笑顔で上塗りする
あたしの限界に、今日届いた手紙が入った。なんとなく手に取り、もう一度見返す
こんなもの貰うのも、今日が4月1日だからだよ...
あたしは、八つ当たりするように、手紙をゴミ箱へと落とす
コトリと音を立て、ゴミ箱の底へと到着した手紙
涼太「A..どうした？」
涼太が優しい声で穏やかに微笑む
その顔を見ていると、心がふわりと浮かんで、胸がギュッと苦しくなるんだ
「ううん。何でもない」
あたしは、どうしようもないジレンマを隠して、笑顔で答える
やっぱり...一日だけ涼太より年上になる、この日が嫌い
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作者名：みンみン | 作成日時：2018年8月15日 9時
