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田中「よし、到着……。」
『ありがとう。』
田中「え、マジでこっから一人なの?」
『うん、そうだよ?』
田中「一人でいける?」
『大丈夫だよ、空港自体はもう慣れてるから。』
田中「ん、……そっか?」
『だから安心して、もう大丈夫だから。』
田中「……そっか。」
『うん。……ん?』
もう着いたのでそろそろ行こうと言うのに、中々手を離してくれない樹くん。
なんとなく考えている事は分かるし、私も本当は同じ気持ちだけど、ここで手を離してもらわないと、こちらから手を振り払えないし。
そんな事を思いながら「そろそろ離して?」という願いを込めて樹くんの顔を見るけれど、どうしても掴んだ手を離してくれない。
『……樹くん?』
田中「……やだ。」
『まだなんにも言ってないけど。』
田中「だって手離したらAちゃんアメリカ行っちゃうもん。」
『いや、そりゃ行くけど……。』
田中「……やっぱ寂しいの。」
『私だって寂しいけど……昨日、行かなきゃって事になったでしょ?』
田中「なったけど……。」
『勿論ちゃんとLINEもするし、電話もするから。必要ならビデオ通話だってするから。……それじゃ駄目?』
田中「……駄目じゃない。」
もう、樹くんのせいで寂しさが倍増してしまったじゃないか。
だけど、もうそろそろ荷物を空港に預けてもらわないと不安なので、樹くんの寂しそうな顔を見ず、手を優しく振り解こうとした……
ものの、
『いや待って、力つよ、』
田中「行かせなきゃいけないのに手が離してくれない……。」
『離してくれなきゃ困る……。泣いちゃう……。』
田中「泣いちゃう、のは駄目だ。」
意外にもすっと手を離してくれた樹くんに安心しつつも、やっぱりどこか寂しさを覚えながら、後部座席からスーツケースを出した。
だけどこのまま「じゃあね」と一言だけ言って渡米してしまうなんて寂しすぎるから、と、スーツケースを抑えたまま、助手席のドアを開けた。
そのまま、助手席の方に身を乗り出して様子を伺っていた樹くんに不意打ちでキスをすると、樹くんは目をまん丸にして、驚いた顔をした。
『また連絡するね。』
田中「っ、うん、」
『ばいばい。』
田中「っ、だいすき!!」
『私も大好き。』
樹くんの方に手を振って、重たいスーツケースをがらがらと引いて、空港の方へ向かった。
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安珠海(プロフ) - 花火2016さん» わー!!調べてくださって嬉しいです!!!!お手隙の際に是非!!!! (2023年2月16日 16時) (レス) id: 81b3a9c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
花火2016(プロフ) - 安珠海さん» コメントありがとうございます!いま調べてみたんですけど、中島裕翔くんのやつなんですね!見てみます! (2023年2月16日 12時) (レス) @page36 id: 0f7e1e76f5 (このIDを非表示/違反報告)
安珠海(プロフ) - いつも素敵なお話ありがとうございます!!!!「#マンホール」という映画がパラノイアと似てる部分があって面白かったので是非見て欲しいです!!お話と関係なくて申し訳ないのですがどうしても伝えたくて、、忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています!!!! (2023年2月16日 3時) (レス) @page36 id: 81b3a9c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっぴー(プロフ) - 花火2016さん» お返事ありがとうございます!! (2022年12月31日 20時) (レス) id: e18cd32993 (このIDを非表示/違反報告)
花火2016(プロフ) - ゆっぴーさん» コメントありがとうございます!喧嘩は無いです!(というか今のところ考えてないです!) (2022年12月31日 18時) (レス) id: 0f7e1e76f5 (このIDを非表示/違反報告)
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