アメリカ ページ8
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田中「忘れ物ない?」
『ない!』
田中「パスポート持った?」
『持った!』
田中「コロナ、に、関する、……あれ、」
『書類も持った!』
田中「クレカは?」
『お財布の中!』
田中「航空券は?」
『手持ちの鞄の中!』
田中「スーツケースは?」
『いま樹くんが持ってる!』
田中「あ、ほんとだ、」
『……よし!忘れ物なし!』
田中「おっけー!じゃあ行こっか!!」
『ニコちゃん、またね。私の事忘れないでね。』
ニコちゃんの「にゃあ」という返事を背に、重たいスーツケースをガラガラと引き、エレベーターへと乗り込んだ。
昨日はあんなに離れてしまうのが寂しかったのに、当日になってしまえば、楽しみという気持ちが上回ってしまうんだから、人間の感情って不思議。
というのも、普段ほとんど贅沢していない分、移動くらいにお金をかけてもバチは当たらないんじゃないかと思い、ファーストクラスを予約したのだ。
今までは高級なクラスに乗ったとしてもビジネスクラスだったので、ファーストクラスなんて初めてで、かなりテンションが上がっている。
マネージャーさんは先にアメリカに行ってくれているので、空港からは完全にひとり旅なのも、なかなか新鮮でドキドキが止まらない。
田中「なんか嬉しそうじゃん。」
『だって、ファーストクラスなんて初めてだから。』
田中「もう俺と離れるの寂しくないわけ?」
『寂しいよ?寂しいけど……ファーストクラスだから、』
田中「ふはっ、かぁわい。上空の写真とか送ってよ?」
『もちろん。豪華な機内食も送るから。』
田中「楽しみに待ってるわ。」
自宅から羽田空港まで、車で約20分。
かなり短い移動時間の中で話す事は、いつもと変わらない事。
お互いの年末の仕事の事や、最近食べて美味しかったもの、撮影であった面白い話など、特に気取らず話せるこの関係性がたまらなく好き。
樹くんの左手が、私の右手の方に伸びてきて、そのまま流されるように手を握ると、嬉しそうな樹くんの笑い声が聞こえて、こちらまで嬉しくなる。
男性にしては小さいけれど、私より大きな手を三ヶ月間も触れられないのは凄く寂しいけれど、「寂しい」と言ったらきっと車は家に戻ってしまうから。
飛行機でアメリカに行く理由が私にはあるから、寂しい気持ちを振り切って、そのまま、羽田空港へと向かう高速道路に目をやった。
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花火2016(プロフ) - 安珠海さん» お久しぶりです!すっっごい遅くなっちゃったんですけど、コメントいただいていた「#マンホール」見ました!!超面白かったです!面白い作品に出会わせていただいてありがとうございます!! (5月2日 3時) (レス) id: d050ed87d3 (このIDを非表示/違反報告)
安珠海(プロフ) - 花火2016さん» わー!!調べてくださって嬉しいです!!!!お手隙の際に是非!!!! (2023年2月16日 16時) (レス) id: 81b3a9c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
花火2016(プロフ) - 安珠海さん» コメントありがとうございます!いま調べてみたんですけど、中島裕翔くんのやつなんですね!見てみます! (2023年2月16日 12時) (レス) @page36 id: 0f7e1e76f5 (このIDを非表示/違反報告)
安珠海(プロフ) - いつも素敵なお話ありがとうございます!!!!「#マンホール」という映画がパラノイアと似てる部分があって面白かったので是非見て欲しいです!!お話と関係なくて申し訳ないのですがどうしても伝えたくて、、忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています!!!! (2023年2月16日 3時) (レス) @page36 id: 81b3a9c5f9 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっぴー(プロフ) - 花火2016さん» お返事ありがとうございます!! (2022年12月31日 20時) (レス) id: e18cd32993 (このIDを非表示/違反報告)
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