第一話 色は匂えど ページ3
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木村「……その証拠は?私に新田を殺害する動機は無いって言ったでしょう?」
『……第三の「は」の殺人事件の被害者……いや、新田徹の愛人だった灰原瑠美が遺してくれたわ。Instagramにね。』
木村「……インスタ?」
『えぇ。……これ、この自撮り写真。ソファーに皮の黒いベルトが掛かってるの。こんなデザインの男物のベルトは普通女性は付けないわ。これと同じ物が新田徹の部屋にあった。』
木村「…………。」
『それともう一つ。この悪趣味なネックレス。これもきっと灰原瑠美が新田徹の物を勝手に着けて写真を撮って投稿したのね。これも新田徹の家の洗面所で見つけたわ。それと……あぁ、これこれ。この灰原瑠美が着ているパーカー。これと同じ物を新田徹は殺害された時着ていたわ。こういうの、世間では匂わせ投稿っていうらしいわね。』
堤「に、匂わせってなんだ、」
『男性と一緒にいることを仄めかす写真を載せる事よ。』
堤「あ、あぁ、なるほど。」
『一応あなたのInstagramも調べて見たけれどアカウントは第一の犯行の前に作られていた。ここに、アカウントを作った時期が載るのよ。きっと……アカウントを作って、ふと彼女の事を検索するまでこの事……匂わせの事、知らなかったのよね。』
木村「…………。」
『……これで灰原瑠美、新田徹とあなたが繋がった。動機は十分に存在するわ。灰原瑠美と新田徹が愛人関係だった事は明白よ。だってあなたが離婚した二年前よりずっと前から、灰原瑠美は新田徹との関係を匂わせていたんだもの。』
木村「…………前の二人の殺人は?どう説明するの?」
『きっと、通り魔みたいな物だったんでしょ。誰でも良かった。血液でナイフが汚されればそれで。その血液でナイフが錆びていけば。……だから無関係の二人を殺害した。わざわざ何も関係の無い男女二人の共通点を作る為に、あなたが好きな【ABC殺人事件】に準えてね。』
木村「……………素晴らしい推理ね。……素敵。」
『……そんなに許せなかったの?新田徹と灰原瑠美が。』
木村「……えぇ。彼は見ての通りヤクザだったけれど、私はそんな彼が好きだった。だから親の反対を押し切って駆け落ち同然で結婚した。
たくさん尽くした。目一杯の愛を捧げた。……だけど、彼は私より綺麗な女を作って離婚届だけ置いて出ていった。
……そこから私の人生は180度変わってしまった。」
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