喧嘩ができない元スケバンさん。２！【今日から俺は！】 (ページ30)

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第２４話！ページ30

呼ぼうとしたけど、出来なかった。

それは、猛くんを呼ぼうとした時、横から女の人が来て、猛くんに手を振ったからだ。

猛くんは、その女の人の事を見て、女の人の方を向いた。

その時点で嫌な空気を察して、私も別の方向に行ってれば良かったんだけど、動けなかった。

嘘だ、って言ってほしかったから。

その女の人は、猛くんに抱き着いて、頬にキスをしたけど、猛くんはそれを拒むかのように引き離した。

もう、その時点で確定だったんだけど、私はその光景から目が離せなくなってしまった。

猛くんは、その女の人に連れられ、私達の前を横切って行った。

相手の女の人は、私よりも年上で、美人で、大人っぽくて、綺麗だった。

露出しているワンピース、大人っぽいメイク、高いヒール、耳に輝くピアス。

私は、自分の今の服装を見る。

露出の少ないジーンズ、白のニット、薄いメイク、スニーカー

高校生の文化祭の時に、猛くんが私にプレゼントしてくれた、ハートのネックレス。

駄目だ、勝ち目がない。

あの人の方が断然綺麗だ。

そう思った瞬間、私の目から熱いものがぼろぼろと溢れてきた。

佐川「...Aさん、大丈夫すか。」

あんな光景を一緒に見てしまったもんだから、直也さんは心配そうに私の顔を見てくる。

なんだか、もう何も考えられない。

『...浮気されちゃいました。』

だけど、泣いてる姿なんて見てほしくなくて、無理に笑って私はそう言った。

気にしてないよ、って顔で。

『...こんな事になるんだったら、勢いでこんな所来なきゃ良かった。』

なんだったんだろう、この5年間。

猛くんの事が好きだから一緒にいたのに。

笑わされて、泣かされて、喜ばされて、驚かされて、心配させられて、心配されて...

楽しかった思い出が、音を立てて崩れ落ちていく瞬間だった。

佐川「Aさん...」

『...じゃあ。』

そう言って、直也さんから離れようとすると、直也さんが私の腕を後ろから引っ張ってきた。

驚いてこっちを見ると、直也さんは私の目をしっかりと見すえて

佐川「Aさん、どうするんですか。」

『...わからないです、よく。』

私がそう言って、涙を拭くと、直也さんは私の肩をガッと掴んだ。

そして、私の目線に合わせてしゃがんで、しっかりとした声でこう言った。

佐川「もし、泊まる場所とかないなら、俺ん家泊まりませんか。」