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間宮「……一回あったんだよ、」
大西「……一回、?」
間宮「……二年くらい前、屋上で二人で煙草吸ってた時に、」
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─ 2 year ago ─
『人ってさぁ、なんで人が死んだら悲しむんだろうね?』
間宮「あ?」
『だって大事だろうがなんだろうが死んだらそれはもう人じゃないじゃん。中身の無いただの入れ物じゃん?何に思い入れがあるんだろうって。』
間宮「……生きてた頃の情だろ。」
『でも、これと同じだよ?ペットボトル。これが、……こうやって、空になったのと同じ。お水が全部こぼれても悲しくなんてないじゃない?』
間宮「お前それに思い入れあんの?」
『ないね。』
間宮「だからこぼれても悲しくねぇんだよ。」
『……じゃあ、ここで私が死んだら、悲しむ人はどのくらいいるのかな?』
間宮「……は?」
『私が、……水嶋いおりが入ってる肉体から魂が飛んで行った時、……この肉体が意味を成さないペットボトルと同等になった時、……悲しんで、泣いて、この入れ物を愛してくれる人はいるのかなぁー……って、っ、』
間宮「おい、危ねぇよ、……降りろ。」
『たしかに私は日本事件史上、最低最悪な事件を起こして、治安の為に私を殺そうとした政府から逃げて、それを馬鹿な若者が騒ぎ立ててさ。……有名人かもしれないけど、……それはただの流行りだから。』
間宮「……。」
『時間が経てば、色んな人が事件も、……私の事も、忘れちゃう。……忘れられちゃう。……世界から、私が、……水嶋いおりが消えちゃう、』
間宮「……っ、おい、危ねぇって、」
『ぜーんぶ、……なかった事にされるのかなぁ。』
間宮「……っ、今すぐ降りろ、」
『あんたは?……シンジはさ、私が、今ここで飛び降りて死んだら、悲しんでくれる?なんで死んだんだって言ってくれる?中身の入ってない、ペットボトル同等の魂の入れ物を、馬鹿みたいに愛してくれる?』
間宮「っ、」
『今ここで死んで……あんたの記憶にずっと居座る女になれたら、それはそれで幸せなのかもしれないね。』
間宮「おい、」
『……じゃあ、……また、記憶の中で会おうね、』
間宮「……っ、やめろ!!」
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間宮「……まぁ、結局その時は助かったんだけど。」
大西「……どうして、いおりさんは、」
間宮「……怖いもの知らずの孤独な犯罪者が唯一恐れていた事は、誰かに「存在をなかった事」にされる事だった。……ただそれだけの事だったんだろ。」
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花火2016(プロフ) - ゆきさん» コメントありがとうございます!!分かりました!お時間かかってしまうかもしれないのですが、出来次第出させていただきます!! (2022年8月12日 0時) (レス) id: 0f7e1e76f5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - いつも楽しく読ませていただいてます!!良ければ、あなたの番です劇場版の、夢主のシーンとか書いて欲しいです!!これからも更新頑張ってください! (2022年8月11日 23時) (レス) id: 665485fed9 (このIDを非表示/違反報告)
花火2016(プロフ) - たまごボーロさん» コメントありがとうございます!今気付きました…笑 実は最初、猪狩くんと高橋くんのお話にしようと思ってたんですが、「後輩くん一人の方が書きやすい…」と思って急遽変更したので、そのミスだと思います…笑 教えていただきありがとうございます! (2022年8月9日 23時) (レス) id: 0f7e1e76f5 (このIDを非表示/違反報告)
たまごボーロ(プロフ) - 後輩の話で最初猪狩くん?の名前ありましたけど、話の中では高橋くんだけってことでいいですか? (2022年8月9日 23時) (レス) @page6 id: c5a7976f82 (このIDを非表示/違反報告)
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