【ツイステ】でかけよ、オンボロ寮(仮)

244.茹でウツボ ページ44

反対の手でゆっくりと触れるとこれまた片手で十分事足りた
陶器のような冷たさを連想される肌は、見かけによらず温かく手に吸い付くように柔らかい

何もかもが違う
これを知った後に「アレ」に縋られたところで、何もかもこの人と比較してしまうんだろう
むせ返るような香水にこの優しい匂いを、作り上げた厚化粧に触れてこの無垢な肌を何度でも求める



ジェイド(思わぬところで弱みができてしまいましたね)


彼女の言動ひとつで振り回される程度には、毒されていたようで
こんな姿本来であれば誰にも見せることはない
いや、普段なら取り乱すことすらないのに今はご覧の通りだ
つけ込まれること、隙を見せること、これらは自分にとって不利を生む材料でしかない


ただそんなことは後で考えても遅くないと思考を放棄してしまうほどに、
今は満ち足りたような気持ちに甘んじている自分がいるのだ



ジェイド「…ねぇ、Aさん







…Aさん？」



名前を呼んだ彼女の頰はいつの間にか、茹でた蟹のように赤らんでいた

彼女の手首から伝わる脈の鼓動は早鐘に変わっており
髪の隙間から見える耳も頬同様染まっていて

もっとよく見たいと言う気持ちから腹部を撫でていた手で髪をすくい耳にかけると、彼女はビクッと肩を跳ね上がらせた

髪は長い方が好みだが、こうして耳がよく見えるのは悪くない

薄暗い部屋でも分かるほどに熱を帯びている

咄嗟に僕の手を叩くように払い自分の耳を抑えるが
顔の赤みは引かず表情も隠しきれてはいない




『....無言で、触るの



...やめてください』




普段であれば「やめてください」と淡々にあしらう彼女は、似つかわしくない少女のような仕草でそう言った

うつむき加減に視線を逸らすが、
そんな彼女を見ていると何故か加虐心が沸き立つ

本能的なものなのか自分の性格なのかは大方判別はついている

初めて見る明らかに同様しているので何かせずにはいられないという衝動と、嫌われたくはないという自制でブレーキをかけ行動に移さずにいるのだ



ジェイド(...いけませんね、これは)







『....ジェイド、さん？』



小さいな声で僕の名前を呼ぶ

蜂蜜のような色をした円な目に映るのは自分だけと考えた途端に
ぶわっと心臓から溢れた熱が全身に回るような感覚を覚えた






ジェイド(...情けない)




瞳に映された自分は酷くしまりのない顔をしていて、
隠すように手で覆った顔は湯を被った時のように酷く熱くなっていた

245.突然の月刊少女ジェイドくん→←243.その小さな体に

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す