【ゲーム実況者】浅き夢見じ酔いもせず【短編集】

今来むと　言ひしばかりに　長月の　有明の月を　待ち出でつるかな／牛沢 ページ1

「あ、もしもしA？」

「あ、うっしーどうしたの？」

「今すぐ帰るから、もう少し待ってて」

「うん。ゆっくりでいいからね」




これは、うっしーがまだ働いているときの話。




今来むと 言ひしばかりに 長月の




ある日のこと。うっしーからそんな電話があった。

その日たまたま仕事が休みだったから、うっしーの家に来ていた。


ご飯を作って待っていたけど、一応ラップをしていた。

うっしーは仕事柄遅れることが多いから眠くなったら寝てたけど……。




「今すぐって言われたら、眠れないよなあ」




うっしーがそんな電話をしてくるのは珍しい、っていうか初めて。

もしかしたら、なにかサプライズがあるのかもしれないなあ。


先にお風呂に入っておこうかな。




そして、何時間か経って11時。

うっしーは全然来ないし、連絡もない。




そろそろ眠くなってきたけど、でも起きてないと。

うっしーだって色々あるだろうから。


ゲームでもしてよう。




そして3時。

うっしーはまだ来ない。




少し空が明るくなっている。でも、うっしーはまだ帰っていない。


ここまで来ると逆に心配になってくるなあ。

なにかあったのかな……？あれからもう何時間も経ってるけど。



ま、まさか事故にあってたりとか……！？

それで今入院中で、私に連絡できないとか。


大丈夫かな……。




6時。月が沈み、白い月が出てきている。

うっしーはまだ帰ってこない。




待って！？これはもうやばいでしょ！？

もう入院とかレベルじゃなく、純粋に心配になってきたんだけど。



と、その時がチャリとドアの開く音がした。




「うっしー！」

「A！？起きてたの！？」




玄関に走ると、スーツ姿のうっしーは驚いた顔をする。

確かに、こんな時間まで待ってた自分に私もびっくりしてる。




「うっしーがすぐ帰るって言ったからなにかあったのかなって」

「ほんとごめん。俺も早く帰りたかったんだけど」




うっしーは私の左手を引っ張って、ぎゅっと握る。

そして、薬指に綺麗に光る結婚指輪をはめる。




「上司に捕まった。この指輪買った場所遠くて行くの時間かかってさ」

「うっしー」




私はうっしーに抱き付く。そして、意識が途切れる。




「寝た……こんな時間まで待たせてごめんな」




有明の月を 待ち出でつるかな








￣￣
なんとも面倒くさい縛りをつけました。がんばります。

嘆けとて　月はや物を　思はする　かこち顔なる　わが涙かな／ヒラノ課長／みみみ　リクエスト→

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