32話 ページ32
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「これで会議を終わりまーす。各自速やかに帰宅してください」
委員長が締めの言葉をいうや否や、途端に周りが騒がしくなる。
やっと終わった、と疲れの意味での溜息を吐いてから鞄を持った。
うっわ嘘やん結構時間かかった…
所々に茶番が入ったりしたからかなぁ。と無性にイライラした気持ちを抑えるために荒々しくドアから出ていった。
「Aちゃーん! まって! 一緒に帰ろ!!!」
『あっ、善逸。うん、いーよー』
ゆる〜くそう言えば、間に合ってよかったぁぁぁと安堵の声を漏らしたのは隣の彼だ。
じめじめしている風を感じながら雑談をし、そろそろ善逸の家と私の家の分かれ道だ。と思っていると不意に手を握られた。
「…ねっ、Aちゃん。最近、炭治郎とかと、また仲良くなってない?」
『えっ? 炭治郎とは元々仲良かったと思うけど…』
「うう〜んっ!!! 仲良いんだけど…その、何て言うか、もっと仲良くなったっていうか。二人の空間ができたっていうか……」
と、ごにょごにょと訳のわからんことを呟いている彼にはてなマークを送ればうぐっと嘆いた。
そして何を迷っているのか少しの無言。
数秒して少し顔が赤くなった善逸と目が合う。
その瞳は、不安げに揺れていて何時もの発作の様なものが起きてるな、と感じた。
「なんかね、炭治郎とAちゃんが仲良いのは友達としてもすんごい嬉しいけど、でも、その…俺との関係が、ないがしろにされてしまう様な、気がして…」
ぎゅっ、と私の存在を確かめる様に、手を握りしめる彼の手は震えている。
それがとても痛々しく感じ、彼の弱々しい手を握り返した。はっ、と息を呑む声が聞こえる。
『どしたん、善逸。またこわーい思考に囚われちゃったの?』
「…そんな、感じ」
『心配しなくても、私達の中は小学生の頃からずっと一緒に育ってきてんだよ? 今更、関係が壊れるなんてそんな心配しなくてだいじょーぶよ』
ふわり、と微笑めば彼の不安そうな表情はだいぶ柔らかくなった。
う " ん"ッッ、と涙声で言うがやはり涙は溢れていない。
でもまだ不安が残っているのか、握っている手を離そうとしない。
その手を一度離そうとした刹那。風が、通った。
途端に感じる浮遊感。お腹に回された腕と地につかない足から、確信した。
『ッッッ! うっそでしょ、獪岳っ!』
彼の黒髪が、私の視界の端で靡いた。
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アオ猫又(プロフ) - 獪岳が好きなんでこの作品がめっちゃ好きです!ありがとう、作者様…。 (2022年1月1日 21時) (レス) @page33 id: 6f2bf6bdd1 (このIDを非表示/違反報告)
わらび餅(プロフ) - いつも楽しみにして見させてもらってます!失礼ですが、42話のしのぶさんの台詞の「あっ、そろそろ〇〇さんの番ですね。....」の番が版になっていました。詳しく書けたか分かりませんが、大丈夫でしたでしょうか?あと、更新頑張ってください!応援してます! (2020年11月22日 21時) (レス) id: 1ef7d533ea (このIDを非表示/違反報告)
るる - 予告とかの文才がありすぎてヤバいです(←文才力0の人) 更新頑張ってください! (2020年4月17日 12時) (レス) id: 9d2e256c74 (このIDを非表示/違反報告)
豆腐の中の棒人間(プロフ) - みっくす14。さん» コメントありがとうございます。誤字指摘有り難いです......!おこがましいかもしれませんが詳しいページを教えてくださると助かります!(無能で申し訳ないです)。 (2020年1月4日 22時) (レス) id: 46f50694f0 (このIDを非表示/違反報告)
みっくす14。 - いつも見させてもらってます!!でもちょーっと直してもらいたいところがあるんですよね。沢山誤字っております。(..)出会いの方ですかね? (2020年1月4日 1時) (レス) id: ebaa9545e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:豆腐の中の棒人間 | 作成日時:2019年12月26日 22時