『匂いつけても、いいですか？』【歌/い/手】

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『……どこだキヨ』


今は夕飯時、いつも以上に待ち合わせ場所に人が溢れている。この人混みのなかでは中々キヨを見つけられない。


取り敢えず、ラインして何処にいるか聞かないと、とスマホを取り出した時、ふいに肩に手を置かれた。

ビビリではないにしろ、急にそんな事されたら誰でも驚くだろう。大袈裟に体をビクつかせてしまった。


「ふはっ、驚き方やっば」
『…キヨ、嫌い』
「あー、ごめんって！A！」


ぶすっ、と不貞腐れている私にまだ笑いながら謝るキヨ。めっさ笑ってるやん……。
まぁ別に本気で怒ってるわけじゃないけど。


「ってか、おまえ遅すぎね？なに、大でもしてたの」
『ちがう、猫追いかけてたら遅くなった』
「そっちのがダメだろ、何してんだよ」


私の回答に、思わずキヨがつっこんだ。
悪いとは思ってるけど、猫ちゃんが居たんだもん、可愛かったから。


『ごめん、もーしないから』
「それ前にも聞いた気がするんだが」
『え、そーだっけ。まあ驚かした事とおあいこってことで』


んー、なんか言いくるめられてる気が……？と言うキヨの頭にはハテナが浮かんでいる。
言いくるめてないよ(すっとぼけ)

まだ唸っているキヨに、早く焼肉が食べたい私は恒例のアレをする。



『キヨ、ん』
「えっ？ ……あぁ、はいよ」


ん、と一緒にキヨに手を差し出した。
一瞬何か分からなかった様だが、意図が分かったのがその手を握ってくれた。

そう、恒例のアレとは手を握る事。
いや、別に私達は付き合ってるわけじゃないけれど、コレをすると安心するからっていう理由で特定の人にはいつもしてもらっている。



『キヨ、やっぱ手おっきーね』
「んまぁ俺が大きいのもあるかもしれねぇけど、Aが小さいってのもあるだろ」



別に、小さくないし。という私にキヨは笑って小せーよ、と笑った。
……んー？キヨのツボがわかんない。

でも、キヨの事がうざいって思わないのは私がキヨの事を好きだからだろう。
うん、なんかね安心するから、キヨ好き。


これから食べる焼肉に心を躍らせ、そんな事を思った。




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