殺し屋姉弟に愛情を (ページ13)

今日:1 hit、昨日:10 hit、合計:7,322 hit

12話　☆ ページ13

「そうか、シャオロンに勝ったか・・・・。」

「グルさん、貴方はどこまで読んでいるんです？」

教授は壁に背を預け、要塞からどこか遠くを眺めながら紅茶を啜る総統に問いかけた。

「さあな。お前はどこまでだと思う？」

「わかりません、ただあなたの真の目的はわかります。」

「そうか。」

静まり返った総統室。
見つめあう二人。

「ああ、それとリアナ王国の件ですが。」

教授のその一言に総統は反応する。

「偵察に行ったゾムさんからの話は聞いていると思います。

そこで、少し調べてみたんですが、どうやらあの国は化学兵器に長けているそうででして

何個かサンプルを入手できたので、先生に見てもらっています。」

パラリ、パラリと書類のめくられる音だけが聞こえる。
外で騒がしいほど聞こえていた声でさえ、聞こえなくなるほど長い、重い沈黙。

「悟られるなよ、そうでないとアイツが悲しむだろう。」

「それはわかってますって、皇太子の件も。ではこれで。

また何かあったら。」

「すまんな。」

教授は静かに総統室を後にした。
総統は飲みかけの紅茶をデスクに置き、目を閉じる。

教授こと、エーミールから渡された極秘資料

『リアナ王国人造人間開発計画書』

それを目の前にして。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

「おや、珍しい人がここに来るものですね、てっきりあなたには縁のない場所かと思っていました。」

図書館の中央のロッキングチェアに座ったままエーミールは声をかけた。

「なぁ、お前はどこまで知っているんや？」

「少なくとも貴方が今望んでいるものは。」

「じゃあ、エミさん。Aの右腕の傷、イツキの左腕の火傷痕。

あれはどういうことなんや？」

ゾムは問いかけた。エーミールは立ち上がり奥の方へ何かを探しに行った。
ついていった先、そう、要塞図書館司書室で目を疑うこととなる。

「そんな・・・エミさんなんで・・・いつの間に・・・。」

「これが答えさ。ゾムさん。」

司書室に掲げられていた切り刻まれたリアマ王国国旗と様々な資料。

「うそやろ・・・。」

「嘘じゃない、本当のことだ。

俺は先代国王のせいで孤児になってグルさんたちのここに来た。

それと同じだ。」

冷たく、冷静に、ゾムを見つめていたその目は

どこからか悲しい、醜い弱音が映し出されている気がした。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

過去編製造機になってる・・・。