３週間【青】 (ページ9)

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Day2 ページ9

今日もA組のホームルームからスタート。

教室に入り、阿部くんの号令で挨拶をする。

順番に出席を取り、最後の渡辺くんの名を呼ぶけど、
今日も相変わらずホームルームから爆睡中。

昨日と同じように井沢さんが渡辺くんを起こし、一瞬顔を上げる。

迷惑そうに目を細めながら私と目が合うと、何か言いた気な顔をして「はい」とだけ返事をして、またすぐ顔を伏せていた。

朝の挨拶を終え、教室を出る前に教卓で資料を整えていると、目の前の渡辺くんが突然ムクっと起きてゆっくり私の所へやって来た。

え…急に起きた？

…何だろうとちょっと身構えてしまう。

渡「…センセーさぁ、昨日の事まだチクってないの？」

私にしか聞こえないような囁き声で聞いてくる。

「まだも何も…言ったりしないよ」

渡「…え、なんで？」

「私はまだ実習生の身でそんな権限ないし…。それに何か事情があるんじゃないの？」

確かに教師を目指す身として、見過ごすのはいけないのかもしれない。

でも、昨日の今日で何も知らない生徒の未来を左右する勇気は私には無かった。

渡「…変な人」

「え、変って…」

普通に悪口じゃん…

渡「センセーさ、あんなマイナーな駅に住んでんの？」

失礼な。確かにマイナーだけど…

「渡辺くんこそ、なんであの場所で？」

渡「普通に学校から遠いとこだから」

うむ…

やっぱり訳ありなのかな、なんて思いながらも話題を変えつつ僅かな期待を込めて、

「渡辺くんさ、今日の授業は少しでも聞いてくれると嬉しいな」

そう話せば、

渡「んー…じゃあ起きてられたら」

「ありがとう。よろしくね」

てっきり拒否されると思ったけど、その返答からは少なくとも全くやる気がない訳じゃないことが感じられた。

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1限、2限、3限と他のクラスで初めて授業を行うと、渡辺くんのように堂々と寝ている生徒は誰一人いなくて優秀だと思った。

と、同時に寝てはいなくても前後で話していたり、携帯をいじっていたりする姿も目立った。

こうなると、一概に起きてることだけが良いことではないのだと思い知らされる。

やっぱり一実習生の授業なんて生徒からしたら参考にならないのかな、ってちょっと凹む。

いやいや、まだ2日目。

始まったばっかりじゃん。

そう気持ちを立て直して、5限のA組の授業までの時間は授業の見直しと生徒のことについて自習の時間に当てた。