３週間【青】 (ページ27)

今日:11 hit、昨日:25 hit、合計:471,480 hit

＊ページ27

なぜか今私は、渡辺くんに手を握られている。

レジのカウンター越しにギュッと。

「えっと…」

翔「…なに？」

「この手は…」

翔「…センセー、顔赤いけど」

「ちょっ！」

咄嗟に手を振り解く。

高校生に揶揄われて動揺するなんて恥ずかしすぎ。

今日はとことんついてない。

優しいと思った矢先に渡辺くんは意地悪だった。

お腹を抱えて笑う彼を一睨みしてから、今日の夕飯を探すため店内をうろつく。

誰もいないのを良いことに、

翔「センセー怒ったのー？ごめんね」

なんて堂々と話しかけてくるのはやめてほしい。

適当にお弁当を選びレジに持って行く。

翔「でさ、何であいつらにあんなこと言われたの？」

また、真面目な顔に戻ってふいに聞かれる。

「…2人が携帯をいじってて、ペアになる授業の時も続けてたから相手の子たちが困ってて。それで、注意したの」

翔「逆恨みかよ、ダセぇ。どう考えてもあいつらが悪いじゃん。」

「私、A組のみんなに授業楽しいって言ってもらえてちょっと浮かれてたんだよね。気が大きくなってたんだと思う。正義感出して注意してみたものの、結局何も言い返せなくて関係ない生徒たちに迷惑かけてさ…」

また涙が出そうだったので、財布から小銭を探す作業に集中して誤魔化した。

翔「でも他の生徒はあんなデタラメ誰も信じてなかったよ」

「本当…？」

翔「いや、下着の色までは知らんけど」

それを言われてまた顔が赤くなる。

平然としてる渡辺くんは女の子慣れしてるに違いない。

翔「少なくとも生徒誘惑するキャラじゃなくない？」

「うん、全然キャラじゃない」

翔「…されてもいいけど」

「え、何？」

翔「…何でもない」

渡辺くんが小さい声で何か言った気がしたけど気のせいだったみたい。

翔「まぁ、それだけセンセーも俺らに信頼され始めてるってことじゃないの？」

渡辺くんはやや憎まれ口を叩きがちだけど、根はとても優しいと思う。

「だと良いんだけどね」

今の私がするべきことは誠心誠意、生徒たちの為に授業を全うすること。

それで彼らの信頼を得ていくしかないのだ。

渡辺くんが授業を聞いてくれるようになったみたいに、小さなことからコツコツと。

「今日は本当にありがとね」

彼に心からの感謝を告げて、店を後にした。

そして、今更になって握られた手の感触を思い出し、なぜか心臓がドキドキした。