３週間【青】 (ページ24)

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意外にもホームルームはいつもの雰囲気と変わらず、滞りなく終わったので安心した。

目の前の渡辺くんは先程職員室で見せた表情のまま、唇を尖らせ俯いている。

井沢さんが渡辺くんのその様子をチラチラ見ると共に、私にも不安気な視線を送るのが少しだけ気になった。

私が図書室にいた間に何かあったのは確かだ。

早く確かめないと。

帰りの挨拶が終わると渡辺くんは瞬時に教室から出て行ってしまった。

じゃあ、宮舘くん…

彼もまたすでに教室にはいない。

じゃあ、阿部くん…

そう思い彼の席に目を向けると、教科書を整えながら鞄に入れている最中だった。

「阿部くん」

阿「はい」

「さっき集まってたのって…」

阿「あ、あれはちょっと翔太が大変で」

渡辺くんが？

「どういう意味？」

阿「僕たち5人で廊下で話してたら、さっきの2人が先生に酷いこと言って…それで先生が去った後もずっと廊下で笑いながらふざけてたんです」

そうだったんだ…

阿「そしたら翔太が、急にダッシュして2人に掴みかかって」

「え！？」

阿「で、僕たち4人で必死に止めて何とか手は出さずに済んだんですけど…」

そこまで言うと、阿部くんが物言いたげにチラッと私を見る。

阿「先生…翔太と何かありました？」

「え？…何かって？」

何のことか全くわからない。

阿「あー…いえ。すみません、何でもないです」

何だったんだろう…？

「阿部くん、迷惑かけてごめんね。それからありがとう」

阿「いえ、僕は何も。じゃあまた明日」

ペコっと頭を下げて爽やかな笑顔を見せながら阿部くんは帰って行った。

教室を出ると息を切らした照が血相を変えてこちらに向かって来た。

「…照。どうしたの？」

照「あ、いや…大丈夫？」

きっと騒ぎを聞いたんだろう。心配して来てくれたみたい。

「うん、平気。開始4日でいきなり問題起こしてごめん」

照「バカ、何言ってんの。Aは何も悪くねーじゃん」

「うん…」

やばい…照のこういう対応に私は弱い。

今までどれだけ助けられてきたことか。

張り詰めた糸が取れたように、視界が涙で歪んでいく。

まだ周りには下校する生徒たちがたくさんいるというのに…
　

照はすぐに私の異変に気付き、私の前にスッと立ち、ドアと自分で私を挟むようにして隠してくれた。

自然な雰囲気で生徒たちに「さようなら」と挨拶をする照の背中をギュッと握り締めながら、私は静かに泣いた。