３週間【青】 (ページ14)

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Shota side

今日もいつものように授業が終わると、一度帰宅して着替える為に自転車置き場に向かう。

涼太に今日は部活休みだからたまには飯でもどう？って誘われたけど、用事があるからと嘘をついて断った。

放課後に遊ぶなんてもう久しくしてない。

バスケも本当は続けたかったけどさ。

体育館から聞こえる元チームメイトたちの声を聞きながら横を通り過ぎた。

チャリ置き場に着いてから鍵を教室に忘れたことに気付く。

うわ、めんどくせぇ…

仕方ないので、ダッシュで教室まで戻り、机の奥に押し込まれていた鍵を取る。

その時、視線の先に教卓に置かれた一冊のノートが目に入った。

何気なく手に取ってパラパラめくる。

そこにはA組からD組の生徒の名前と、その横に箇条書きで1人ずつの特徴らしきものが書かれていた。

すぐにあの実習生のものだと分かった。

‘’阿部亮平くん‘’

・学級委員
・天文部
・いつもハツラツとしていて爽やか
・挙手をよくして答えてくれる
・サラサラストレート

渡「プッ！サラサラストレートって何だよ」

独特のメモに思わず吹き出した。

そうなると、自分の部分が気になるのが人間の心理なわけで。

‘’渡辺翔太くん‘’のページを思わず探す。

・いつも寝てる
・帰宅部
・私より肌キレイ
・何か秘めてる…？
・とても良い声で聞きやすい

肌キレイの部分は阿部と同じように吹き出したけど、最後の一文はおそらく今日書き足されたのか、ペンの色が違っていた。

へぇ。

俺って良い声なんだ。

確かに今日の授業で聞きやすかったって言われたっけ。

…そんな事言われたの初めてだった。

正直、ちょっと嬉しかった。

だからなんか眠気も覚めて、そのまま授業を聞いたんだ。

さすがに人のノートを隅々まで見るのは気が引けたけど、最後の方に、

【目標】

・分かりやすく楽しい授業を行う
・古典を好きになってもらう
・みんなに授業をしっかり聞いてもらう
・悔いのない３週間にする

そんな事が書いてあった。

…クソ真面目かよ。

でも、確かになんか一生懸命だし、悪い人じゃないのは伝わった。

何よりバイトのことも黙っててくれたし。

３週間…

その文字が目に入った時に、たった３週間ならこの実習生の目標達成に協力してあげてもいいかなって、ちょっとだけそんな風に思ったんだ。