キミと過ごした夏（SnowMan）

渡辺先輩×キャンプファイヤー ページ39

先輩は試すように至近距離で私を見ている。



男の人なのに綺麗な肌。それに意地悪な目…



いったいこの人は何がしたいの？



揶揄われてるのがとたんに悔しくなり、私はなるべく動揺を隠しながら全く動じてないフリを貫いた。



「…先輩も酔ってるんですか？」



渡「あいにくシラフだよ」



「…戻らないんですか？」



渡「うーん、どうしよっかな」



「…なん、ですか？」



渡「もうちょっとキミと話してよっかなって。暇だし」


暇つぶしに利用されている私っていったい…



「私、もう帰りたい…です」



もう色んな事に耐えられなくて。



至近距離のキレイな先輩の顔にも、よくわからないシチュエーションにも、惨めな自分にも…



いったい私が何をしたっていうの？



なんだかすごく泣きたい気分になった。



渡「…ごめん。ちょっとからかいすぎたね。許して？」



今度はそう言って、少し甘えた顔で見つめてくるからずるい。



「大丈夫です」



渡「もっと男慣れしてんのかと思ったからさ」



どこをどう見てそう思ったのか…謎すぎる。



「…渡辺先輩とは違います」



渡「さっきと話違うじゃん。笑 てか、俺の名前知ってたんだ？」


「まぁ…はい」



渡「なんで？」



「有名です。…目立ってますし、かっこいいってよく1年生たちも言ってます」



渡「へぇ。すごいじゃん、俺。笑」



そうなんです。

だから住む世界が違うんですってば。



渡「まぁ確かに、キミの彼氏も真面目そうだしね」



…へ？


いったい何のこと言ってるんだろう？


誰かと勘違いしてるんだろうか…



だけど、聞き返す気力もなくてそのまま流してしまった。


どうせ渡辺先輩と絡むのも今日限りだろうし。



「あの、本当にさっきはありがとうございました。…おやすみなさい」


ぺこっと頭を下げて、とりあえず強制的に帰ろうと踵を返す。



渡「（人1）！」



いきなり名字で呼び捨てにされてドキっとしたと共に、ずっとキミって呼んでいたのに名前知ってたの？って面食らう。


「はい…」



渡「…宿舎まで送る？」



「結構です。もう大丈夫なので！失礼します！」



再び頭を下げた後は、ほとんど競歩に近い感じで足早にその場を去った。



渡辺先輩のあの独特の雰囲気にもう耐えられなくて。



緊張しすぎて一気に疲れてしまった。



長い長い1日の締めくくりは、絶対交流するはずもなかった渡辺先輩とのやり取りで幕を降ろした。





Fin.

作者より→←渡辺先輩×キャンプファイヤー

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す